はじめに
近年、地方の中小製造業が直面する課題は深刻です。原材料費の高騰、後継者不足、人材難、そして販路の縮小。そのなかで、家業を継いだ2代目経営者が会社をV字回復させた成功事例をご紹介します。
今回は、ある地方のダンボール工場の再建ストーリーを通じて、同じような課題を抱える中小企業のヒントになればと思います。
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1. 経営難に陥った老舗ダンボール工場の現状
昭和から続く家族経営のダンボール工場。初代社長は地元企業との信頼関係で事業を築いてきましたが、以下のような経営課題に直面していました。
•大手との下請け関係が中心で利益率が低い
•原材料費の高騰にも価格転嫁ができず赤字続き
•社員の高齢化・技術継承問題
•新規顧客ゼロ。営業活動・ホームページも未整備
•設備の老朽化による生産効率の低下
このままでは、事業継続が危うい状況でした。
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2. 商社出身の2代目が描いた再生プラン
33歳で家業に戻った2代目社長は、都内の商社での経験を活かし、会社の立て直しを図ります。まずは徹底的な現状分析から始め、以下の4つの戦略を打ち出しました。
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① 小ロット・短納期を武器に「強み」を明確化
•「どこでも作れる段ボール」ではなく、「小ロットで翌日納品できる工場」を打ち出す
• 食品EC、地元の農産物直販業者など新しい市場に特化
• 既存設備でも対応できる付加価値型サービスで価格競争から脱却
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② オンライン販路の構築
•自社ホームページを開設し、無料相談窓口を設置
•GoogleマップやInstagram、楽天なども活用しBtoC販路を開拓
•地元商工会と連携し、検索対策(SEO)も強化
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③ 現場改革と従業員満足度の向上
•5分間の朝会で現場の意見を吸い上げ、改善提案を即実行
•作業着・工場の見た目をリニューアルし、若手採用にも好影響
•高卒採用を開始し、地元工業高校と関係構築
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④ 財務体質の見直しと補助金活用
•日本政策金融公庫からの融資で新型印刷機を導入
•「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」で資金調達成功
•地元金融機関と連携し、資金繰り表を毎月提出し信用強化
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3. 再建後の成果
2代目が就任してわずか3年で赤字から黒字へV字回復を実現。その成果は数字にもはっきり表れています。
指標 就任前 就任後3年目
年商 約1.8億円 約3.2億円
粗利率 約18% 約25%
新規顧客 0社 年間30社以上
若手社員比率 0% 約25%
離職率 高 0%
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4. この事例から学べること
中小製造業の経営者が見直すべき重要ポイントは以下の通りです。
分野 取り組みのヒント
戦略 強みを明確化し「誰に・何を・どう届けるか」を再定義
営業 オンライン活用と顧客層の再設定が鍵
組織 現場の声と環境整備で定着率とモチベーションが改善
資金 補助金・融資の戦略的活用で設備投資も可能に
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まとめ:変える勇気と、守る覚悟
2代目経営者の最大の仕事は「変革」と「継承」のバランスを取ることです。
この事例は、どんなに厳しい状況でも、経営に「意思」と「知恵」を持って取り組めば道は拓けるという証明です。
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