No.89 【実録】「あの元請けさえいれば安泰」と思っていた私が、売上の8割を失って気づいた「1社依存」の恐怖
2026年1月5日
No.89 【実録】「あの元請けさえいれば安泰」と思っていた私が、売上の8割を失って気づいた「1社依存」の恐怖
「鈴木さん、聞いてくださいよ。信じられません…。まさか、あのA建設が、うちを切るなんて…」
先日、私が懇意にしている塗装会社の社長から、悲痛な電話がかかってきました。
その会社は、地元の有力ゼネコンであるA建設の「専属下請け」として、長年、売上の8割以上を依存してきました。
「A建設の仕事さえしていれば間違いない」「他の営業なんて必要ない」
社長はいつも、そう豪語していました。私も何度か「リスク分散のために、他の元請けとも付き合った方がいいですよ」と忠告しましたが、「鈴木さんはA社との太いパイプを知らないから、そんな心配をするんだよ」と笑い飛ばされていました。
ところが、事態は急変しました。
A建設の社長が交代し、これまで懇意にしていた担当部長が左遷されたのです。新しい経営陣は「コストカット」を掲げ、下請け業者の見直しを断行。「お宅の単価は高すぎる。来月から3割カットだ。嫌なら他を探す」と、一方的に通告してきたのです。
3割カットでは、完全に赤字です。しかし、断れば来月の売上はほぼゼロになります。
「生殺与奪の権」を完全に握られた状態。社長は、電話口で男泣きしていました。
これは、決して他人事ではありません。
もし今、あなたの会社の売上の半分以上が、たった1つの元請け企業に依存しているなら。あなたは、時限爆弾を抱えて経営しているのと同じです。
今回は、多くの下請け社長が陥る「1社依存の甘い罠」と、そこから抜け出すための、血のにじむような構造改革について、私の実体験も交えてお話しします。
なぜ、1社依存は「経営」ではなく「隷属」なのか?
特定の元請けと太いパイプを持つことは、一見すると安定しているように見えます。
営業努力をしなくても、向こうから勝手に仕事が降ってくる。支払いサイトも安定している。現場の勝手も分かっている。
これほど楽なことはありません。いわゆる「ぬるま湯」です。
しかし、そのぬるま湯に浸かっている間に、あなたの会社は着実に弱体化していきます。
① 営業力が退化し、思考停止に陥る
「仕事はもらうもの」という意識が染みつき、自ら新規顧客を開拓するノウハウも気概も失われます。
「A社がこう言ってるから」と、自社の頭で考えることをやめてしまいます。
② 対等な単価交渉ができなくなる
依存度が高まれば高まるほど、元請けに対する交渉力は弱まります。
「嫌なら辞めてもいいんだぞ?」という無言の圧力の前では、理不尽な値引き要求や、急な工期短縮も飲み込むしかありません。
これは、もはや独立した企業の「経営」とは呼べません。実質的なA社の「都合の良い調整弁」であり、「隷属」しているのと同じ状態なのです。
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では、どうすればこの恐怖から逃れられるのか。
いきなり依存先の仕事を断る必要はありません。そんなことをすれば、会社が潰れてしまいます。
重要なのは、時間をかけて「依存度」を下げていくことです。
Action 1:最大手の売上構成比を「50%以下」に下げる目標を立てる
まずは現状把握です。直近の決算書を見て、取引先ごとの売上構成比を出してください。
もし、1位の会社が70%や80%を超えていたら、危険水域です。
「3年以内に、最大手の比率を50%以下にする」といった具体的な数値目標を立て、社内で共有します。
これは、「A社の仕事を減らす」のではなく、「A社以外の売上を増やす」というポジティブな目標設定にしてください。
Action 2:Bランク、Cランクの元請けへの営業を再開する
「A社が忙しいから」と断っていた、他の元請けはいませんか?
あるいは、過去に少しだけ取引があったが、疎遠になっている会社はありませんか?
今すぐ、手土産を持って挨拶回りに行ってください。
「おかげさまで少し手が空きまして、御社のお力になれることがあればと思いまして」と、下手に出て関係を再構築します。
多少単価が安くても、手間がかかっても構いません。「A社以外からの入金」を作ることが最優先です。
Action 3:下請け仕事以外の「第二の柱」を作る(直接客への挑戦)
これが、究極のリスクヘッジです。
元請けに依存しない、自社でコントロールできる売上の柱を持つことです。
いきなり新築の元請けを目指す必要はありません。「小さな修繕」や「専門特化リフォーム」など、自社の技術を活かして、エンドユーザー(直接客)から直接受注できる仕組みを少しずつ作っていきます。
たとえ月数十万円でも、直接客からの売上があれば、それが精神的な支柱となり、元請けに対する交渉力も劇的に変わります。
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No.80 いきなり新築元請けは無理でも、「小さな修繕」なら今日から取れる。下請けが最初の「直接客(エンド)」を掴む戦術
まとめ:真の「安定」は、自らの足で立つことから始まる
冒頭の塗装会社の社長は、その後どうなったか。
彼は歯を食いしばり、3割カットの屈辱的な条件を飲み込みました。会社を潰さないためです。
しかし、その日から彼の目の色は変わりました。
「鈴木さん、目が覚めました。俺は今まで、経営者じゃなかった。ただのA社の飼い犬でした。もう二度と、あんな惨めな思いはしたくない」
彼は今、必死で他の元請けへの営業を行い、同時に、自社のホームページを立ち上げて直接客の集客にも挑戦し始めています。
社長、あなたの会社は大丈夫ですか?
「あの元請けさえいれば安泰」という幻想を捨て、「自分の城は自分で守る」という覚悟を持った時、初めてあなたの会社は、真の意味で「強い会社」へと生まれ変わるのです。
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