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No.84 社長の「個人保証」を外す条件とは?銀行員は決算書のここを見ている。金利を下げ、融資枠を広げる財務テクニック

2025年12月31日

No.84 社長の「個人保証」を外す条件とは?銀行員は決算書のここを見ている。金利を下げ、融資枠を広げる財務テクニック

「鈴木さん、会社が潰れたら、俺の家も土地も、全部銀行に持ってかれちまう。それが怖くて、夜も眠れねぇんだよ…」

建設会社の社長にとって、銀行借入の際の「連帯保証人(個人保証)」は、文字通り命を削るような重圧です。
会社の借金を個人が背負う。この日本の悪しき商慣習が、どれだけ社長の精神をすり減らし、思い切った投資を躊躇させ、そして、円滑な事業承継を妨げてきたことか。

「息子に会社を継がせたいが、俺の代の借金まで背負わせるのは忍びない…」と、廃業を選ぶ社長も少なくありません。

社長、諦めるのはまだ早いです。
今、国を挙げて「経営者保証ガイドライン」を推進し、一定の条件を満たせば、中小企業でも個人保証を外せる流れができています。

今回は、銀行員が審査の裏で決算書のどこを見ているのかを暴露し、個人保証を外し、さらに金利を下げて融資枠を広げるための、泥臭い財務テクニックをお話しします。

銀行員は「敵」ではない。彼らが保証を求める「本当の理由」

まず、敵(銀行)を知りましょう。なぜ彼らは、頑なに個人保証を求めてくるのでしょうか?
「社長を信用していないから」ではありません。

最大の理由は、中小企業、特に建設業の決算書が「信用できないから」です。

  • 利益が出ているように見えても、実は架空の売上が計上されているかもしれない(粉飾)。
  • 会社の金が、社長個人の生活費や遊興費に流れているかもしれない(公私混同)。

銀行は、こうしたリスクをカバーするための「人質」として、個人保証を求めているのです。
逆に言えば、「うちの会社はガラス張りで、財務内容も健全ですよ」と証明できれば、保証は必要なくなるのです。

銀行員が必ずチェックする「決算書の3つのツボ」

では、具体的にどこを見ているのか。銀行員が電卓を叩いてチェックするのは、主にこの3点です。

① 実質的に「債務超過」になっていないか?

決算書(貸借対照表)の「純資産」がプラスであることは最低条件です。
しかし、銀行は表面上の数字を信じません。

「回収不能な売掛金が資産に計上されていないか?」「価値のない在庫(未成工事支出金)が残っていないか?」「社長への貸付金(役員貸付金)という名の使途不明金はないか?」

これらを資産から差し引いても、なお純資産がプラスである(実質資産超過)ことが絶対条件です。

② 本業で「メシが食えている」か?(営業利益とキャッシュフロー)

特別利益(土地を売った金など)でたまたま黒字になっただけでは意味がありません。
本業の儲けを示す「営業利益」が、2期連続で黒字であることが目安です。

さらに重要なのが「返済能力」です。
「営業利益 + 減価償却費(これが大まかな手元のキャッシュ)」が、年間の借金返済額を上回っているか。これが下回っていたら、「返せないのに借りようとしている」と判断されます。

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③ 社長の財布と会社の財布が「別々」になっているか?

これが最も耳の痛い話かもしれません。
会社から社長への「役員貸付金」や、社長から会社への「役員借入金」が多額にある会社は、銀行から「公私混同が激しい=信用できない会社」というレッテルを貼られます。

特に「役員貸付金」は、銀行から見れば「会社が銀行から借りた金を、社長が個人的に使っている」とみなされます。これがあるうちは、個人保証を外すのは不可能です。

個人保証を外すための「具体的なアクション」

条件が分かったところで、どう動くか。いきなり支店長に「保証を外してくれ!」と直談判しても玉砕します。

Step 1:現状把握と財務改善

まず、自社の決算書を上記の3つの視点で見直してください。税理士に頼んで「実態バランスシート」を作ってもらうのも良いでしょう。
その上で、役員貸付金の解消や、不良資産の処分など、身を削るような財務改善を断行します。

Step 2:銀行担当者への「決意表明」

改善が進んだら、銀行の担当者にこう切り出します。
「将来の事業承継を見据えて、私の代で個人保証を外したい。そのために、御社が求める条件を教えてほしい」

「外してくれ」ではなく「外すための目標を共有させてくれ」と持ちかけるのがコツです。
まともな担当者なら、具体的な数値目標(自己資本比率〇%以上など)を教えてくれるはずです。

Step 3:「経営計画書」と「月次試算表」で信頼を積み上げる

口約束だけではダメです。「今後3年間で、どうやって利益を出し、どうやって財務体質を改善するか」を記した具体的な「経営計画書」を提出します。
そして、毎月(少なくとも四半期ごと)に、正確な「月次試算表」を銀行に持参し、計画通りに進んでいるかを報告します。

この「透明性の高い情報開示」こそが、銀行からの信頼を勝ち取り、金利引き下げや融資枠拡大を引き出す最強の武器になります。

まとめ:個人保証解除は、強い会社になった「証」

個人保証を外す道のりは、決して平坦ではありません。時間もかかるし、痛みを伴う改革も必要です。

しかし、それを乗り越えたとき、あなたの会社は「銀行が保証人なしでも金を貸したくなるような、盤石な財務体質を持った強い会社」に生まれ変わっています。
そのとき初めて、社長は「夜も眠れない恐怖」から解放され、胸を張って次の世代にバトンを渡せるのです。


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