No.79 ある日突然、元請けが飛んだら…。連鎖倒産を防ぐため、現場の「ゴミ」と経理の「電話」から危険な兆候を見抜く法

「鈴木さん、えらいことになった…。〇〇建設が、昨日付けで事業停止したらしい」

電話口で震える社長の声を聞くたびに、私の背筋も凍ります。
元請けの倒産。それは下請けにとって、積み上げてきた売掛金が一瞬にして紙切れになり、自社の存続すら危うくなる「最大の悪夢」です。

「まさか、あの大手が」「先月まで一緒に飲んでいたのに」

そう思いたい気持ちは分かります。しかし、倒産は突然やってくるものではありません。必ず、その何ヶ月も前から、現場や経理の動きに「小さな異変」が現れているものです。

社長、あなたの会社を守れるのは、あなただけです。
今回は、決算書なんか見なくても分かる、現場の最前線で元請けの「危険な兆候（ヤバいサイン）」を見抜く、泥臭いけれど確実な方法をお伝えします。

現場は嘘をつかない。「ゴミ」と「人」に現れる危険信号

元請けの資金繰りが苦しくなると、真っ先に影響が出るのは「現場」です。
経営状態が良いときは見えなかったボロが、余裕がなくなることで隠しきれなくなるのです。

① 産廃コンテナが溢れかえっている

これは非常に分かりやすいサインです。産業廃棄物の処理費用をケチり始め、コンテナが満杯になってもなかなか回収を呼ばなくなります。
現場がゴミだらけで整理整頓されていない会社は、資金繰りも整理されていない可能性が高いです。

② 職人の質が下がり、入れ替わりが激しい

腕の良い職人や協力業者は、情報に敏感です。「あの会社、支払いが遅れてるらしいぞ」という噂が流れると、優秀な人間から順に逃げていきます。
結果、現場に残るのは、他に行き場のない質の低い職人ばかりになり、トラブルや手直しが増加します。

③ 安全管理が杜撰（ずさん）になる

余裕がなくなると、安全対策にかける金や手間を惜しむようになります。足場が不安定、安全帯の使用が徹底されていない、朝礼が適当…。
安全を軽視する会社は、下請けの命（経営）も軽視します。

経理担当者は気づいている。「電話」と「紙」に現れる危険信号

現場だけでなく、経理や事務のやり取りにも変化が現れます。
社長が気づかなくても、毎日請求書を処理している経理担当者は「なんか変だな」と感じているはずです。

① 支払いサイトの変更や、手形比率の増加

「今月から締日と支払日を変更させてほしい」「今回だけ、現金じゃなく手形にしてくれないか（しかもサイトが長い）」
これはもう、資金繰りがショート寸前だという悲鳴です。絶対に「分かりました」と安請け合いしてはいけません。

② 小さな支払い遅延や、請求書の難癖

「振込手続きが遅れていて、来週になります」「この請求書のここがおかしいから、支払いを保留します」
今までになかったような小さな遅延や、理不尽な難癖で支払いを先延ばしにしようとする動きは、末期症状です。

③ 担当者が捕まらない、急に退職する

経理担当者がいつも電話中で捕まらない（債権者対応に追われている）、あるいは長年勤めた経理担当者が急に辞めてしまった。
これは、内部で相当なゴタゴタが起きている証拠です。

まとめ：「性善説」を捨てろ。自分の城は自分で守るしかない

「まさか裏切ることはないだろう」という性善説は、ビジネスの世界では命取りになります。
上記のようなサインを一つでも感じたら、すぐに動いてください。

• 同業者や信用調査会社を使って情報収集する。
• 新規の受注をストップし、現在進行中の現場の引き揚げ（損切り）も検討する。
• 弁護士に相談し、内容証明の送付や仮差押えなどの準備を始める。

冷徹に見えるかもしれませんが、それが社員とその家族を守る、社長の責任です。
「怪しい」と思ったら、その直感を信じてください。現場の肌感覚こそが、最強のリスク管理なのです。

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