No.78 職人にiPadを持たせたら遊ぶだけ?それは社長の思い込みだ。ITアレルギーのベテランを動かす「小さなDX」導入法
2025年12月25日
No.78 「俺は〇〇屋だ、他の仕事はやらん」と言う職人をどう動かす?人手不足の建設現場を救う唯一の切り札「多能工化」
「鈴木さん、現場が回らないんですよ。人が足りなくて…」
最近、どの現場に行っても聞こえてくるのは、この悲鳴です。
若手は入ってこない。ベテランは引退していく。限られた人数で、これまでと同じ量の仕事をこなさなければならない。
そんなギリギリの状況で、現場の生産性を劇的に下げる原因となっているのが、これまでの建設業界の常識だった「完全分業制」です。
「LGS(軽天)の下地が終わるまで、ボード屋は手待ち」
「ボードが貼り終わるまで、クロス屋は現場に入れない」
一人の職人が一つの専門作業しかできない「単能工」ばかりでは、どうしても工程の間に「待ち時間」が発生します。
人が余っていた時代ならそれでも良かった。しかし、今は違います。その「待ち時間」こそが、会社の利益を食いつぶす最大のムダなのです。
今回は、人手不足の時代を生き抜くための唯一の切り札、「多能工化(マルチタスク)」についてお話しします。
最大の壁は、職人の「プライド」にあり
多能工化の必要性は、社長も頭では分かっているはずです。しかし、いざ導入しようとすると、現場から猛反発を食らいます。
「俺はクロス屋として誇りを持ってやってきたんだ。大工仕事なんかできるか!」
「そんな中途半端なことをやったら、専門性が落ちて品質が下がるぞ!」
職人たちの言い分も分かります。彼らにとって「専門性」はアイデンティティそのものです。
しかし、社長。ここで引いてはいけません。
厳しいことを言いますが、一つのことしかできない職人は、これから淘汰されていきます。
AIやロボットが進化すれば、単純な専門作業は真っ先に代替されるでしょう。最後まで生き残るのは、「複数の作業を組み合わせて、現場全体を回せる人間」だけです。
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多能工化は、会社と職人の「ウィンウィン」戦略だ
職人を説得するには、「会社のため」ではなく、「彼ら自身のメリット」を伝える必要があります。
【会社のメリット】
- 生産性の向上:手待ち時間がなくなり、少ない人数で現場が回るようになる。
- 工期短縮:工程間のロスがなくなり、全体の工期が短縮される。
- 柔軟な人員配置:急な欠員が出ても、他の職人がカバーできるため現場が止まらない。
【職人のメリット】
- 給与アップ:できる作業が増えれば、当然、評価が上がり給料も増える。
- 市場価値の向上:どこに行っても通用する「潰しがきく職人」になれる。将来の独立にも有利。
- 仕事の面白さ:全体が見えるようになり、仕事の幅が広がることで、マンネリ化を防げる。
「多能工化は、君たちの仕事を奪うものではない。君たちの価値を高め、将来の食い扶持を守るための『最強の武器』なんだ」と、社長の言葉で熱く語りかけてください。
まずは「関連する作業」から小さく始める
いきなり「明日から全員、全ての作業ができるようになれ」と言っても無理です。
まずは、関連性の高い作業から広げていくのが鉄則です。
- クロス職人が、簡単なボード補修もできるようになる。
- LGS職人が、ボード貼りまで一貫して行えるようになる。
- 水道設備職人が、簡単な電気配線のつなぎ込みもできるようになる。
そして、新たに覚えたスキルに対しては、きちんと評価制度(給与や手当)で報いることが不可欠です。
「頑張って仕事を覚えたら、ちゃんと給料が上がった」という成功体験がなければ、誰もついてきません。
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まとめ:「専門バカ」で終わるな、「現場のプロ」になれ
昔気質の職人たちが守ってきた「一芸を極める」という美学。私はそれを否定しません。
しかし、それだけでは立ち行かない時代が来てしまったのです。
一つのことしかできない「専門バカ」で終わるのか。
それとも、複数の武器を操り、どんな現場でも重宝される「真のプロフェッショナル」になるのか。
社長、今こそ決断の時です。
多能工化という荒療治で、あなたの会社と職人たちの未来を切り拓きましょう。
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