No.72 残業規制で「稼げなくなった職人」が逃げ出す前に。給料を下げずに労働時間を減らす、ウルトラCの賃金制度
2025年12月20日
No.72 2024年問題、最大の危機は「法律違反」ではない。残業規制で稼げなくなった職人が逃げ出す「離職ドミノ」だ
とうとう始まりました、建設業への時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)。
多くの社長が「法律を守らないと罰則がある」と、労働時間の管理に躍起になっています。
しかし、現場の最前線にいる社長なら、もっと恐ろしい現実に気づいているはずです。
それは、労働基準監督署の指導ではなく、「職人の大量離職」という危機です。
「残業するなと言われたら、手取りが減って生活できない」
「稼げないなら、もっと稼げる会社か、他業界に行く」
腕の良い職人ほど、見切りをつけるのは早いです。
今回は、法律を守りつつ、職人の生活も守り、会社を存続させるための「ウルトラC」の賃金対策についてお話しします。
「時短=給料カット」では、会社は崩壊する
これまで建設業界は、「日給月給制」+「残業代」で職人の生活を支えてきました。
基本給は低くても、現場が忙しければ残業代で稼げる。それが職人にとってのモチベーションでもありました。
そこに、いきなり「残業は月45時間(年360時間)まで」というフタがされたらどうなるか。
単純計算で、月数万円〜十数万円の収入減になる職人もいるでしょう。
会社が「法律だから仕方ない。早く帰れ」と言うのは簡単です。
しかし、家のローンや子供の教育費を抱えた職人にとって、それは「死活問題」です。
何の対策もせずに労働時間だけ削れば、待っているのは以下の二択です。
- 生活のために、職人がもっと稼げる会社へ転職する。
- 隠れて仕事をする「サービス残業」が横行し、結局ブラック化する。
給料を下げずに時間を減らす「ウルトラC」の仕組み
では、どうすればいいのか。
答えは一つしかありません。「労働時間は減らすが、給与総額(手取り)は維持する」ことです。
「そんな魔法みたいなことができるか!原資はどこにあるんだ!」と怒鳴られそうですが、これを実現しなければ、人は残りません。
具体的なアプローチとしては、以下のような賃金体系の見直しが必要です。
- 固定残業代(みなし残業)の導入・増額:
あらかじめ一定時間分の残業代を基本給に組み込んで支払う。これにより、早く帰っても一定の収入が保証されます。(※適法な運用が必須です) - 基本給(日当)のベースアップ:
残業が減った分を、基本給の引き上げでカバーする。これが最も理想的ですが、会社の負担は増えます。 - 生産性評価への移行:
「長く働いた人」ではなく、「短時間で成果を出した人」に手当を厚くする評価制度へ切り替える。
いずれにせよ、会社の持ち出し(人件費負担)は一時的に増える可能性が高いでしょう。
その原資を確保するためには、前回お話しした「元請けへの単価交渉(No.71)」が絶対に不可欠になるのです。
▼ 関連記事:原資を確保するための交渉術
No.71 「材料費が上がったので…」は禁句。元請けを論破せず“納得”させて単価を上げる、最強の交渉術
まとめ:これは「ピンチ」ではなく「淘汰」である
2024年問題は、対応できない会社から職人が去り、対応できた会社に良い職人が集まるという、建設業界の「大淘汰」の始まりです。
「法律が悪い」と嘆いていても、職人は守れません。
歯を食いしばって賃金体系を見直し、生き残る側の会社になりましょう。
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