経営計画の立て方はどうすべき?短期・中期・長期それぞれを解説
2022年10月27日新米経営者の中には、「会社を立ち上げて事業を始めたが、経営計画は必要だろうか」と思っている方もいらっしゃると思います。
経営計画というと、大企業や金融機関がホームページや株主総会などで掲げているものというイメージがあります。
しかし、本来の経営計画は、経営者自身が経営の目標を理解して、現状と理想の差を埋めるための、具体的な数値や戦略を明確にするプロセスなのです。
会社の規模や業種は関係なく、中小企業や個人事業主でも経営計画は必要です。
経営計画が明確になれば、変化に対応できる強い会社経営ができます。
そこで本記事では、具体的な経営計画の立て方を、順を追って解説していきます。
新米経営者の疑問!経営計画とはなにか?
経営計画とはそもそも何でしょうか。
中小企業庁の発行している「ゼロからはじめる経営革新計画進め方ガイドブック」では、以下のように説明されています。
経営計画とは、現状から将来のあるべき姿に到達するための「道しるべ」となるものです。
経営計画は、絶えず変化する環境の中で会社が現在よりも高い水準の目標を設定し、その目標を実現するために、何をするべきかが明確になっています。
それによって、自社のあるべき姿を具体的に示し、着実にその姿に到達するために「経営計画」を作成する必要があるのです。
経営計画は、経営者の思いを具体的なビジネスプロセスに落とし込んだもの、とも言えるでしょう。
経営計画を立てる順番
経営計画の概要をご理解いただいたところで、次は経営計画を立てる順番を考えていきましょう。
たとえば、学生の頃、定期テスト対策のための勉強計画を立てた経験は誰にでもあると思います。
その際、テストまであと何日あるか計算し、そこから逆算して一日にこなす勉強量を決めたのではないでしょうか。
経営計画も同様で、まず10年間単位の長期経営計画を立て、そこから逆算して3から5年程度の中期経営計画、さらに逆算して1から2年程度の短期経営計画を立てていくのがスムーズな方法です。
長期経営計画の立て方・要素
まずは、10年間単位の長期経営計画を立てる方法です。
急に10年後のことを想像するのは難しい、と思われる方もいるかもしれませんが、以下で説明する手順にそっていけば大丈夫です。
- 経営理念を決める
- 行動指針・ミッションを決める
- 実現したい会社像を決める
- 数値目標を決める
順番に解説していきます。
経営理念を決める
はじめに、経営理念を決めましょう。
経営理念は、大きく3つの要素で構成されます。
- ミッション
- ビジョン
- バリュー
この3つです。
まずミッションとは、企業が果たすべき使命、存在意義を指します。
企業活動を通じてどのように世の中に貢献していくのかという企業のレゾン・デートルを示します。
次にビジョンとは、企業が目指すべき姿のことです。
「10年後に売上を●万円にする」といった具体的な数値目標や、企業が到達したい将来の姿をビジョンで示します。
最後にバリューとは、企業の価値観や行動規範のことです。
「スピード感を持って業務運営する」や「地域とのつながりを作る」といった従業員が行動する際の規範を示します。
行動指針・ミッションを決める
次に、経営理念をより具体化して、行動指針・ミッションを決めていきます。
市場・社会でのポジション(例:業界の中核企業を目指す)や、組織・人事姿勢(例:給与水準を業界トップにする)などに具体的に落とし込んでいきましょう。
実現したい会社像を決める
続いて、実現したい会社像を決めましょう。
まずは大枠から、「今やってみたいこと」はどんなことかを、以下で挙げる5つの柱に沿って考えてみましょう。
- 経営
- 人事
- 営業
- 商品
- 財務
数値目標を決める
長期経営計画の最後は、数値目標です。
10年後の売上高はいくらか、原価は?人件費は?経常利益は?など、数値は具体的であればあるほど良いでしょう。
具体的な数値目標を設定することによって、経営者と従業員の間で共有した際のイメージのギャップを減らせる効果があります。
監修者コメント
10年後どうなっているかなんてわからないと思います しかしコンサルタントは今の経営課題に合わせた将来の予測数字まで示してくれます。一番肝心なのは経営に集中するために何をしなければならないのかが大事である |
中期経営計画の立て方・要素
ここからは、中期経営計画の立て方や要素について説明していきます。
中期経営計画は「中計」とも呼ばれ、さまざまな企業のホームページや株主総会資料で目にすることも多いかもしれません。
長期経営計画を元に、3年から5年程度のスパンにブレイクダウンしていくのが王道の作成方法です。
ブレイクダウンの仕方を詳しく記載すると、以下のようになります。
- 企業が存続させるための要素を洗い出す
- 人員計画を明確にする
- 新規事業計画を明確にする
- 利益計画を明確にする
- 資金計画を明確にする
以下で順番に説明します。
企業が存続させるための要素を洗い出す
まずは、長期経営計画を元に、5年先まで企業が存続するための要素を洗い出しましょう。
長期経営計画と同様、以下の柱を中心にブレイン・ストーミングしていくのが良いでしょう。
- 経営
- 人事
- 営業
- 商品
- 財務
人員計画を明確にする
次に、「ヒト」に関する計画、つまり人員計画を明確にしましょう。
たとえば、5年後の売上を1億円にしたいと考えた時、最低でも2億円程度の予材が必要です。
この2億円の予材を仕込むために、何人の人員が必要か、また1億円の売上が立った後、どのくらいの規模のバックオフィスが居れば事務が回るかを逆算しましょう。
このようにすることで、人員計画・採用計画が具体的に立案できます。
新規事業計画を明確にする
さらに、予材の計画を立てる過程で、現在の商材だけで計画が充足できるか確認しましょう。
これが「モノ」に関する計画です。
もしも、現在の商材だけでは不足していると判断した場合、新規事業や新商品の開発に着手する必要が出てきます。
新規事業や新商品開発を軌道に乗せるには、どのような新事業が必要か、どのような新商品を扱う必要があるかを中期経営計画の中で具体的に数値を使って明確に計画する必要があります。
また、新規事業や新商品開発のためには、合わせて設備投資計画・人員計画も立てていくことになります。
利益計画を明確にする
「ヒト」「モノ」に関する計画の次は、「カネ」に関する計画に移ります。
まずは、事業における売上高だけでなく、費用・利益なども精緻に計画しましょう。
PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)を考慮し、安定してキャッシュをもたらすコア事業と、投資して成長させていく事業、撤退や縮小すべき事業を見極め、数値化しましょう。
資金計画を明確にする
「カネ」に関する計画は本業(営業損益)だけではありません。
営業外損益、つまり銀行やマーケットからの資金調達と、その返済にかかる資金計画も必要です。
ここまでに立案した人員計画・事業計画や新規出店計画など、営業利益だけでカバーできない新規資金が必要な計画があれば、その資金をどこから調達し、どんなペースで返済していくのかの計画を立てましょう。
短期経営計画の立て方・要素
ここからは、短期経営計画の立て方・要素について説明します。
今後1年(場合によっては2年程度先まで)の予算計画や売上計画を中心に行動計画を決めていきます。
短期経営計画は、長期経営計画や中期経営計画とは異なり、日々の数値管理・会計管理の結果を受けてPDCAサイクルを回していくことも重要です。
具体的には、以下のようなプロセスが挙げられます。
- 中期経営計画を達成するための行動指針を決める
- 直近1年間の利益目標を決め中期経営計画が達成できるか照らし合わせる
- 行動に対して達成できる人員がいるかどうかを確認
- 決定した行動指針に対して不足している要素を洗い出す
以下で順番に説明します。
中期経営計画を達成するための行動指針を決める
短期経営計画はただの計画ではなく、実際に現場レベルで使っていくものです。
そのためにも、中期経営計画を達成するための具体的な行動指針に落とし込んでいきましょう。
たとえば、「お客様に満足してもらえる商品を提供する」という目標に対して、「製品設計を見直す」という中計を立てたのであれば、この戦略が上手くいっているかどうかを確認する必要があります。
そこで、製品設計を見直した後、1年間でその製品の売上高を2割増加させるという数値目標を立案すれば、その後それがどれだけ達成できたかを定量的に確認できるようになります。
直近1年間の利益目標を決め中期経営計画が達成できるか照らし合わせる
直近1年間の利益目標は、3年から5年スパンの中期経営計画に比べ、予想しやすいという特徴があります。
過去のトレンドや外部環境分析を踏まえ、直近1年間の利益目標をまず決めましょう。
続いて、それをベースに向こう3年分の利益目標を算出し、その3年分の利益目標で、中期経営計画が達成できるか検証していきましょう。
計算が合わず、中計の達成が困難とわかった場合は、中計の見直しが必要になる場合もあります。
行動に対して達成できる人員がいるかどうかを確認
短期経営計画で決定した行動に対し、十分な人員がいるかを確認しましょう。
営業だけでなく、売上が増加するとバックオフィスの事務負荷も上がっていくため、業務を回すには各セクションの人員計画に目を配らなければなりません。
不足が発生するようであれば、社内ローテーションの計画や採用計画を再考していく必要があります。
決定した行動指針に対して不足している要素を洗い出す
上記では、短期的な利益計画や人員計画が中計と整合しているかを確認しましたが、他の要素についても確認します。
たとえば、設備投資計画や資金計画も中計とマッチしているか順に点検していき、不足している要素を洗い出しましょう。
このような着実な確認作業が、盤石な経営の土台となっていきます。
監修者コメント
大企業の場合と中小企業の場合は経営計画の作り方が変わります。 タイムリーな情報を、月次で示し経営計画にそっているのかそっていないのかを明確にし経営計画を達成させなければなりません。多くの場合、人、物、金が課題です。 経営幹部が経営計画を建て真摯に向かわせる必要があります。 経営者は、命かけて資金繰りしていますが社員はお金を触っていないのでギャップ生じていきます。 この辺のギャップをどう埋めていくかは主たる経営会議にて売上管理、原価管理、コスト管理が重要であります。 |
経営計画の重要性
冒頭でも少し触れましたが、経営計画は大企業に限らず、中小企業や個人事業主など、ビジネスの規模に関係なく重要な指針です。
経営計画の重要性について、以下で具体的に説明します。
- 経営計画を明確にすることで経営の軸ができる
- 計画から脱線しても指針があるため軌道修正ができる
- 決定した目標に対しての行動が明確化する
以下で順番に説明します。
経営計画を明確にすることで経営の軸ができる
長期経営計画をはじめとする計画を立てるプロセスで、経営理念や行動指針など、年月が経っても変わらない(変えない)経営の軸が出来ていきます。
ブレない経営の軸を作ることで、ブレない会社が形作られます。
計画から脱線しても指針があるため軌道修正ができる
中長期的な「目標とする姿」が具体的に計画できていれば、外部環境の変化などで足元の業績が計画から脱線してしまっても、最終的にこの「目標とする姿」に近づくための軌道修正が可能です。
決定した目標に対しての行動が明確化する
長期的な計画を立てただけでは「絵に描いた餅」になってしまいがちですが、中期経営計画・短期経営計画とセットで立案して検証していくことで、ファクトに裏打ちされた堅牢な計画ができます。
そのような堅牢な計画にもとづけば、自ずと足元取るべき行動が明確になるという相乗効果が期待できます。
監修者コメント
経営計画を真摯に達成していくということは、年間計画を納得いくまでたて PDCAサイクルを月次で回すために経営会議を開催し毎月毎月納得いくまで経営計画に沿ったKPIを立て、経営計画を建てた経営幹部が経営者に報告する義務を作ることです。脱線していたらアドバイスしアクションプランを練り直すことが大切です |
経営計画は重要な要素となるためプロに相談しながら決めるのがおすすめ
本記事では、経営計画の立て方を、長期経営計画・中期経営計画・短期経営計画に分割して説明してきました。
経営計画は、力強い経営の軸となる重要な指針です。
独力である程度作成した後は、経営コンサルタントなどのプロに相談しながら決めていくことをおすすめします。