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黒字倒産とは?黒字なのに倒産してしまう理由を経営コンサルタントが解説

2023年1月15日
黒字倒産とは?黒字なのに倒産してしまう理由を経営コンサルタントが解説

黒字倒産、という言葉を聞いたことはありますか。

実は、中小企業の休廃業が増加傾向にあり、特に一定の黒字を出しているにもかかわらず、経営に行き詰まり事業を停止する「黒字倒産」が増えています。

この記事では、黒字倒産とはなにか、また黒字倒産が起こってしまう仕組みや回避方法について解説します。

黒字倒産について

黒字倒産とは、会計上は利益が出ているにもかかわらず、資金繰り上必要な資金が不足し、その結果として倒産してしまうことです。

企業間の取引においては、「掛け」が一般的です。

実際に商品を販売してもその場で代金の受け渡しは行わず、数カ月後に決済するものです。

この商品を販売してから実際に現金を受け取るまでの間に、人件費や借入返済などの支払いに必要な資金が不足し、倒産してしまうことがあります。

これが黒字倒産です。

黒字倒産を回避するには、自社の入出金状況を把握し、キャッシュフローがプラスになるような経営を心掛けることが必要です。

黒字倒産が起こってしまう仕組み

黒字倒産が起こってしまう仕組みについて、数値例を交えて詳しく説明します。

例えば、当月の売上が100万円あったとします。この月の仕入れにかかる費用が80万円だったとしても、会計上(帳簿上)では20万円の黒字が出ているはずです。

しかし、この売上を掛け(売掛金)処理していると、回収日が来るまでは売上は手元に入ってきません。

この時点で、資金繰り上はマイナスです。

このような状態が重なり、資金繰りがうまく回らず会社の経済状況が悪化することから、黒字倒産が起きます。

他に、一見しただけでは黒字倒産とわかりにくい例として、不良在庫を抱えたケースを以下で説明します。

  • 損益計算書(P/L)における状態

損益計算書では、売上から仕入値を差し引いて損益を算出しますが、売れた分のみが仕入として認識され、在庫については仕入としてカウントされません。

例えば、単価1万円の商品を100個仕入れたとすれば、仕入値の合計は売上原価は100万円です。

そして、この商品を2万円で60個売ったとすると、売上は120万円になります。

この時、損益計算書における仕入(売上原価)は、100万円ではなく60万円と認識します。

そのため、損益計算書上では利益(売上総利益)は以下のようになります。

  • 売上原価→@1万円×60個=60万円
  • 売上→@2万円×60個=120万円
  • 売上総利益→120万円-60万円=60万円

・キャッシュフロー計算書(C/F)における状態

上述では、損益計算書上の利益を確認しました。

一方で、キャッシュフロー計算書は現金の流れを示すので、以下のように表示されます。

  • 売上原価(キャッシュアウト)→@1万円×100個=100万円
  • 売上(キャッシュイン)→@2万円×60個=120万円
  • 収支→100万円-120万円=▲20万円

以上から分かる通り、損益計算書(帳簿・会計)では黒字が出ているのに、キャッシュフロー計算書(資金繰り)では赤字であるというゆがみが生じています。

監修コメント

黒字倒産とは、損益計算書(P/L)では黒字の状態でありながら経営破綻することを指します。企業が倒産へと至ってしまう原因はさまざまな原因があります。その原因の上位5つは「販売不振」「既往のしわよせ」「連鎖倒産」「放漫経営」「過小資本」となっています。黒字倒産の要因が上記のどれかに当てはまる場合、迅速な解決と対応を目指す必要があります。

黒字倒産と赤字倒産の違い

ここまで、黒字倒産の起こる仕組みを解説してきましたが、改めて赤字倒産、つまり通常イメージされる倒産との違いを解説します。

黒字倒産は会計上の収益が経費や支出よりも大きいものの、売上が回収できるまでの期間ズレの問題や不良在庫などの問題で手元の現金が不足し、倒産してしまうことを指します。

一方で赤字倒産は単純に経費や支出が収益より多く、債権者や取引先など方々への支払いができなくなり発生する倒産です。

つまり、会計・帳簿上の収益と支出の大小がポイントです。

赤字でも倒産しないことがある

黒字でも倒産してしまう黒字倒産について説明していますが、逆に赤字でも倒産しないケースも紹介します。

極端な例で、売上がゼロ、掛けでの仕入(買掛金)が100万円だとしましょう。

この場合、出資金や借入金などで手元に100万円を超える現金があれば、買掛金の支払には耐えられるので、倒産はしません。

ただし、このまま赤字が続けば、倒産してしまうリスクはあります。

黒字倒産を回避するためには

ここからは、黒字倒産を回避するための具体的な施策やポイントについて説明します。

  • キャッシュフローを見直す
  • 決算書類を見て自社の現状を把握する
  • 過剰在庫を抱えていないかを確認
  • 融資や投資で資金を得る
  • 経営コンサルタントに相談して根本から解決してもらう

以下で順番に詳しく見ていきます。

キャッシュフローを見直す

まずは、キャッシュフロー、すなわち資金繰りを見直すことをおすすめします。

上述の「黒字倒産について」で解説したように、会計上は黒字でも、収益の回収が遅くキャッシュフローがマイナスだと黒字倒産が起こってしまうリスクがあります。

そこで、収益の回収を早めるように取引先と交渉するなどの施策が考えられます。

これを「サイトを早くする」と呼びます。

逆に、仕入などで資金を支払う方は、なるべく後回しにすることをおすすめします。

単純に申し入れただけでは受け入れてもらいづらいため、例えば買掛金ではなく支払手形を利用するなどの交渉材料が考えられます。

決算書類を見て自社の現状を把握する

つづいて、決算書類を見て自社の現状を把握することをおすすめします。

キャッシュフロー計算書で現金の出入りを確認し、損益計算書で損益分岐点を把握します。

また、中でも、貸借対照表(B/S)に記載されている自己資本比率に注目すると、黒字倒産のリスクが分かります。

自己資本比率とは

自己資本比率とは、総資本(総資産)のうち純資産の占める割合で、どれくらい自己資本に依存しているかの割合を示すものです。

自己資本比率が高い場合は、総資本(総資産)の中の返済しなければならない負債、すなわち他人資本が少なく、資金繰りが安定しているといえます。

過剰在庫を抱えていないかを確認

さらに、過剰な在庫を抱えていないか確認しましょう。

上述の「黒字倒産について」で解説したように、不良在庫・過重在庫は資金繰りと帳簿上の損益のズレ・ゆがみを招きます。

また、在庫は保有しているだけで倉庫代など管理費用がかかり、損失の増大に繋がります。

そのため、黒字であっても管理費が払えなくなり倒産してしまうという事例もあります。

融資や投資で資金を得る

融資や投資で資金・現金を得るのは有効な施策です。

万が一赤字であっても、手元に現金があれば支払いが滞ることはなく、倒産は免れます。

そのため、融資を受けたり、出資を募ったりすることで手元の現金を厚くし、資金繰りを回復させることで倒産を回避できます。

ただし、融資の場合は返済が必要なため、将来的な資金繰り面ではマイナスに働くリスクがあることは理解しておきましょう。

経営コンサルタントに相談して根本から解決してもらう

最後に、経営コンサルタントに相談するという手段もあります。

経営コンサルタントに帳簿をチェックしてもらうことで、いわゆるどんぶり勘定になってしまっている部分や、細かい業務の無駄を指摘してもらえます。

そうすれば、根本的な資金繰りの改善が図れ、恒常的な黒字体質に生まれ変わることができます。

黒字倒産を回避するためにはキャッシュフローの見直しが大切

この記事では、黒字倒産とはなにか、また黒字倒産が起こってしまう仕組みや回避方法について解説してきました。

以下で簡単にまとめます。

  • 黒字倒産とは、会計上は利益が出ているにもかかわらず、資金繰り上必要な資金が不足し、その結果として倒産してしまうこと
  • 黒字倒産を回避するには、自社の入出金状況を把握し、キャッシュフローがプラスになるような経営を心掛けることが必要
  • 具体的には、「キャッシュフローを見直す」、「決算書類を見て自社の現状を把握する」、「過重在庫を抱えていないかを確認」、「融資や投資で資金を得る」、「経営コンサルタントに相談」

以上、黒字倒産について説明してきました。

繰り返しになりますが、黒字倒産を回避するには、経営を行う上での基本であるキャッシュフローの管理や在庫管理など、堅実な経営体制の構築が求められます。

経営体制を改善したいという方はぜひお気軽にお問合せください。

  • エスエスコンサルティング株式会社 会長
    鈴木 進一

    運輸業や建設業、製造業を始め累計1,300社以上の企業を支援し、多くの経営課題を解決に導いた実績がある。戦略立案からオペレーション改革、サプライチェーンマネジメントを主とした施策を得意とする。

    業務分野として、調達コストの削減から製造拠点の再設計、生産性の改善、研究開発から製品開発の強化など幅広く対応。
    BtoB向けサービスを行う企業が抱える、様々な課題に対して豊富な実績と経験から今も現場で手腕を振るっている。

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