中小企業が事業拡大を成功させるための方法とは?現役経営コンサルタントの解説付きで紹介
2022年11月22日新型コロナウイルスの感染拡大により「経営環境が大きく変わってしまった」との声を、事業者のみなさまからよく聞くようになって久しいです。
今後の見通しも不透明な中で、環境変化に不安を抱えている経営者も多いのではないでしょうか?
このように経営を取り巻く環境が大きく変わるなかで、成長を続けるための戦略のひとつが事業拡大です。
本記事では、事業拡大のメリット・デメリットやタイミングについて説明します。
事業拡大の定義について
まず、本記事での事業拡大の定義について簡単に確認しておきます。
事業拡大とは、一言で表すと、現在の事業内容よりも事業活動を大きく広げる経営手法のことです。
事業拡大に成功すると事業利益の増加を期待できるため、現在の日本では多くの中小企業が事業拡大を検討しています。
中小企業を対象としたアンケートでは、36%の企業が「事業領域を見直した経験がある」、つまり事業拡大を行ったことがあると回答していました。
きっかけは、リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウイルス拡大など様々なマイナス局面のようですが、自社の成長を目指す企業にとって、事業拡大は取り組むべき課題です。
(出典:令和3年度 中小企業の経営戦略及びデジタル化の動向に関する調査に係る痛く事業報告書)
監修コメント
事業拡大とは企業が衰退しないように常に業務拡大することでもあります。 「うちは大手の取引先があり長年付き合っているのでその会社が業務拡大をすればうちも大きくなるし縮小傾向であれば反対に縮小する」という会社があります。しかし、自助努力で事業拡大して会社を大きく成長させることが大切といえるため、取り引き先に依存せずに別の視点で成長できるようにしていきましょう。 |
中小企業が行う事業拡大方法について
中小企業が行う事業拡大の方法は、方向性によって以下の2通りがあります。
- 既存事業を拡大する
- 新規事業に参入して拡大する
既存事業の拡大は、新市場や既存市場に既存の商品を販売促進していくアプローチで、新規事業は、同じく新市場や既存市場に対して、新しい商品を企画・開発・販売していくアプローチになります。
以下で詳しく見ていきましょう。
既存事業を拡大する
まずは、既存事業の拡大です。
こちらは現在行っている事業内容を深掘りしていくことで、更なる利益を目指す方法です。
既存事業のノウハウや販売チャネルが活用できるため、リスクが低く抑えられる点がメリットです。
ただし、大きく利益を上げて成功するためには、既存市場を開拓する余地や、自社製品・サービス需要の変化を継続的に分析することが重要です。
具体的には、新世代製品の導入、製品ラインの拡張、新しい属性の追加など、既存製品の枠に収まらない、創造性のある研究開発や商品企画が重要になってきます。
新規事業に参入して拡大する
2つ目は、新規事業に参入して拡大する方法で、多角化ともいいます。
既存事業とは異なる新しい分野に事業を展開し、新規事業による利益創出を目指す方法です。
新規事業には新しい生産体制や販売チャネルの構築が必要で、新規市場の環境や他社製品について入念に調査する必要もあり、リスクは高めです。
一方で新規事業が成功した場合は新たな利益を生む軸となりえます。
未知の領域のため、自社で一からビジネスを立ち上げるのではなく、M&Aで企業を買収して資源やノウハウを手に入れることもあります。
この場合は、買収先の企業の価値を見抜く目も必要になってきます。
監修コメント
新規事業を実施する場合、自社の経営幹部に任せていくのか経営者自らが陣頭指揮をとっていくのか、またはヘッドハンティングしていくのかと様々な考え方があります。 特に、中小企業の場合は経営者自らが陣頭指揮をとり取り組まなければ、うまくいくのもいまく行きません。経営をしながら色々なことを遂行する必要があるため、体一つでは足りないです。一方で、自社の経営幹部に任せたとしても成功する確率が低い場合、経営感覚でどのようにして成功させなければならないのかを検討する必要があります。成功する未来が見えるまでは実施は避けるべきで、理由としては失敗すると社員の士気も下がることが懸念されるためです。 |
中小企業が行う事業拡大するメリット
ここからは、中小企業が事業拡大したときに得られるメリットについて説明します。
- 成功すれば売上が向上する
- 既存事業の販促につながる
- 事業拡大の施策の中で課題を見つけられる
これらについて、以下で詳しく見ていきます。
成功すれば売り上げが向上する
事業拡大に成功すれば、新しい経営の軸として売上に大きく貢献してくれることが考えられますし、会社全体で見れば、市場シェア率も上がっていくことが期待されます。
投入した経営リソースを回収して余りある利益にも結びつくことでしょう。
既存事業の販促につながる
事業拡大によって活動の幅を広げることは、より多くの取引先や顧客と接点を持つことに繋がります。
事業拡大に成功すれば、テレビや雑誌、ネットニュースなどのメディアに取材されることもあるかもしれません。
企業の知名度が上がるとブランドイメージも向上するため、既存事業の販促に繋がっていきます。
事業拡大の施策の中で課題を見つけられる
事業拡大を打ち出すためには、自社のこれまでの事業拡大の傾向や強み弱みを確認・分析し、その分析結果を踏まえて新しい一手に打って出る必要があります。
つまり、事業拡大施策(ToBe)を策定するために、自社の現在位置(AsIs)をしっかり把握できるという副産物が得られるのです。
その結果、たとえば既存の市場で既存の商品を売るにあたっても、まだ着手していない施策が発見できたり、既存商品であっても海外などの新市場にアピールできるポイントを見定めることができるかもしれません。
また、多角化を行うと決めた場合でも、販売チャネルの拡大など、解決することで既存事業に活かせるノウハウ・ナレッジに変わっていく課題を見つけることが出来ます。
これらは直接は売上や利益には結びつきませんが、大きなメリットであることは間違いありません。
監修コメント
ビジネスメリットとして人材を採用すると思わぬプラスな出来事があります。 ある事例で、アルバイトパートの方が入社しその方はすごく掃除が上手でした。気持ち良いくらいピカピカにしてくれるほか、愛想も良いほかにたまたま隣の事務所の社長さんにうちも1週間に一度清掃してくれないかと頼まれたそうです。隣の部屋の経営者にも頼まれ、あれよあれよと10社ほど請け負うことになりました。パートさんの人脈で人材も確保し、全く別な分野の事業に参入できた事例もあります。どこで事業が成立するかわからないものですね。 今では、お掃除付きのパートの方が小会社の社長をして、経営を真剣にしているという思わぬ展開もあるものです。 |
中小企業が行う事業拡大するデメリット
ここからは、中小企業が事業拡大する際のデメリットについても触れておきます。
- 予算によっては失敗すると会社が傾く
- 事業拡大について実施するまで時間がかかる
これらについて、以下で詳しく見ていきます。
予算によっては失敗すると会社が傾く
大きな予算を投入して拡大した事業に失敗してしまった場合、初期投資である設備導入・人材確保・製品開発などのコストが回収できなくなるリスクがあります。
最悪の場合、会社が傾くことにもなりかねません。
このようなことを防ぐためには、しっかりと計画を立てて回避できるリスクは回避していくことや、スモールスタートを心がけて小規模から少しずつ試すなどの方法が考えられます。
事業拡大について実施するまで時間がかかる
事業拡大を実行するためには、先行投資が必要となります。
必要な投資金額は事業拡大の方法や事業内容によって異なるものの、設備導入・人材確保・製品開発などにかかるトータルコストは決して低くありません。
先行投資の金額を自己資金で賄うか、他人資本を利用して外部から資金調達を行うかを考え、当面の資金繰りについても考えることが必要です。
また、事業拡大に成功して売上が増加しても、最初は先行投資したコストの回収となります。
事業拡大による利益・リターンが得られるまでには時間がかかることも覚えておきましょう。
監修コメント
事業拡大についての利益リターンの考え方です。 中小企業に関してはそんなに潤沢な資金があって事業に挑むと言うわけではありません。 経営者としてどこまで耐えられるかが問題です。こればかりは、経営者の経営判断になるため、自信持って経営できる利益構造を作り、何ヶ月なのか何年耐えられるのかをしっかり見極め良い経営判断をしてください。 |
中小企業が事業拡大をする時は経営状態が安定しているとき
上で事業拡大のメリットとデメリットを説明しましたが、大前提として事業拡大を目指すのは経営状態が安定しているときが絶対におすすめです。
経営状態が安定していないと、会社に資金がなく事業投資をしている中で資金がショート(不足)してしまう可能性があるからです。
そのため、タイミングとしては会社の資金繰りや財務状況に無理のないときを選択して拡大を検討すべきです。
監修コメント
私がコンサルティングしていて、経営状態が安定している会社が新規事業に向かい本気になって取り組んでいるケースは稀です。何故なら安定しているもので人の配置と投資、コスト配分ができているので今無理してやらなくても良いのではないか…という社内の空気も出てきます。何事もやり通すという信念をもちビジネスを進めましょう。 |
事業拡大をする際に経営コンサルタントへの依頼がおすすめな理由
ここからは、事業拡大を目指す際に経営コンサルタントへ依頼するのがおすすめな理由について説明していきます。
- 自社で考えている案が正しいのか第三者視点でアドバイスをもらえる
- 事業拡大に関するプランを考えてもらえる
- 事業拡大にかかわる人的リソースの不足を補ってもらえる
以下で詳しく見ていきます。
自社で考えている案が正しいのか第三者視点でアドバイスをもらえる
事業拡大には既存製品の枠に収まらない、創造性のある商品企画が重要なのは先程述べた通りです。
優秀な経営コンサルタントは、事業拡大にかかる思考のフレームワーク(枠組み)に関する知識が豊富なだけでなく、同業他社の事例にも造詣が深いため、自社で考えている案が正しいのか、複数のフレームワークも活用しながら第三者視点でアドバイスをもらえるというメリットがあります。
そのため、創造性のある商品企画を立案する助けになります。
事業拡大に関するプランを考えてもらえる
企画した事業拡大を実行に移すためには、様々なプランを立てていく必要があります。
資金計画や経営計画の修正または再構築、業務管理体制の構築、リソース(ヒト・モノ・カネ)の計画などがそれに当たります。
これらを自社のみで行っていては、時間がいくら有っても足りません。
経営コンサルタントに依頼することで、これらをアウトソーシングし、自分たちは本業に近い活動に経営資源を集中できます。
事業拡大にかかわる人的リソースの不足を補ってもらえる
上でも少し触れましたが、事業拡大にかかわるリソース、特に人的リソースは膨大です。
このような場合、経営コンサルタントの活躍の場です。
プロジェクトの多くでは、クライアント企業の社員もチームのメンバーとして一緒に進めていきます。
この際、コンサルタントはすべて自分で行うのではなく、時にはサポートに回り、クライアント企業の社員が持っている業界知識や経験をうまく引き出しながら、課題解決につなげていきます。
こうして、経営コンサルタントには人的リソースの不足を補ってもらうことが可能です。
監修コメント
ある事例を、お話しします。経営者が自社の経営課題がわからず事業が止まり始め、弊社コンサルタントに白羽の矢が経ちました。経営者に対してヒアリングし、コンサルタントとして事業ドメインを理解した上でフレームワークを作り推進するにあたって、「先生にお任せするので社員にも先生から伝えてください」と言われたことがあります。 事業の経営判断をするのは、経営者自身ですので責任の所在も経営者になります。責任転嫁はできないところであるため、よほどのことがない限りは経営者が経営判断のもと社内に指示命令を出すべきです。我々は、あくまで自社の足りないところを補う人的リソースであるため、その辺を理解して抱けると良いかと思います。 |
中小企業が事業拡大をする時は慎重に
事業拡大とは、一言で表すと、現在の事業内容よりも事業活動を大きく広げる経営手法のことでした。
そして本記事では、中小企業が外部環境の変化に適応・対抗するために事業拡大を目指す際、直面しうるメリット・デメリットなどについて説明してきました。
- メリットは、売上向上だけでなく、既存市場の販促やノウハウの蓄積等がある
- デメリットは、失敗したときの資金ショートや時間が取られること
- 大前提として、経営が安定しているときが事業拡大のタイミングとしておすすめ
現在の経営が安定しており、ヒト・モノ・カネなどのリソースが十分であると判断できるなら、リスクを取って事業拡大する価値があります。
そしてその際は、ノウハウを持っている経営コンサルタントに相談するのがおすすめです。