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No.82 汚いトラックと作業着が、会社の「信用」を落としている。1円もかけずに単価を上げる、現場の「見せ方」改革

2025年12月29日

No.82 汚いトラックと作業着が、会社の「信用」を落としている。1円もかけずに単価を上げる、現場の「見せ方」改革

「鈴木さん、うちは腕には自信があるんですよ。一度仕事を頼んでくれたら、絶対に満足させてみせる。でも、どうも最初の見積もりで叩かれたり、なかなか良い元請けと巡り会えなかったりでねぇ…」

先日、ある型枠工事会社の社長が、居酒屋で焼酎のグラスを傾けながら、悔しそうにこう漏らしていました。
私はその社長の会社をよく知っています。職人さんたちの技術は確かに一流です。真面目で、仕事に誇りを持っていることも知っています。

でも、私は心を鬼にして、社長にこう言いました。

「社長、腕がいいのは分かっています。でも、それが伝わっていないのが問題なんです。はっきり言わせてもらいますが、御社のあの泥だらけのトラックと、ヨレヨレの作業着。あれが、会社の価値を半分以下に見せているんですよ」

社長は一瞬、ムッとした顔をしました。
「鈴木さん、現場は汚れるもんでしょうが! 我々は泥にまみれてナンボの商売ですよ。見た目なんか気にしてたら、仕事になりませんよ」

社長のお気持ち、痛いほど分かります。私も現場出身ですから。
しかし、時代は変わりました。令和の今、「汚い=一生懸命」という図式は、もう通用しません。

むしろ、「汚い=だらしない」「汚い=仕事が雑そう」「汚い=信用できない」というレッテルを貼られてしまう時代なのです。

今回は、多くの下請け建設会社が陥っている「見た目の罠」について、私の視点でお話しします。
これは、新しいユニフォームを作ろうとか、新車を買おうという話ではありません。「1円もかけずに」、会社の信用と単価を上げるための、意識改革の話です。


1. なぜ、元請けの監督は「トラックのタイヤ」を見るのか?

人は見た目が9割、なんて言葉がありますが、ビジネス、特に新規の取引においては、第一印象が全てを決まると言っても過言ではありません。

元請けの監督や、発注者である施主(お客様)は、あなたの会社のどこを見ていると思いますか?
職人の技術? いえ、技術なんて素人目には分かりません。工事が終わってみないと評価できないんです。

彼らが最初に見るのは、「パッと見の印象」です。

「汚い会社」が損をする3つの理由

  1. 仕事が雑だと思われる(品質への不安):
    道具や車両を大切に扱えない会社が、お客様の大切な建物や資材を丁寧に扱えるはずがない。そう直感的に思われてしまいます。「見えないところで手抜きをするんじゃないか?」という疑念を生むのです。
  2. トラブルを起こしそう(管理能力への不安):
    整理整頓ができていない現場は、安全管理もずさんに見えます。近隣住民からのクレーム対応も下手そうに見えます。監督は「この会社を使うと、余計な手間が増えそうだ」と警戒します。
  3. 足元を見られる(単価交渉の弱体化):
    これが一番痛い。だらしない格好の相手に対して、人は無意識に「安く買い叩ける」と思ってしまいます。「こいつらなら、この程度の金額で文句は言わないだろう」とナメられてしまうのです。

逆に、トラックがいつもピカピカで、作業着がパリッとしている会社の職人が現れたらどうでしょう。
「お、ここはしっかりしてそうだな」「安くはないだろうが、安心して任せられそうだ」と、最初から信頼のベースができた状態で話が進みます。

つまり、「見た目」を整えることは、最強の「無言の営業活動」であり、単価アップのための「事前の準備」なのです。

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2. 1円もかけずにできる「3つの見せ方改革」

「理屈は分かったけど、毎日忙しいのに、そんなことまで手が回らないよ」

そう思うかもしれません。でも社長、これは「やるかやらないか」ではなく、プロとして「やって当たり前」のことなんです。
お金をかける必要はありません。必要なのは、少しの手間と意識だけです。

① トラック・車両:会社の「顔」を磨け

現場に向かうトラックは、動く広告塔であり、会社の顔です。
泥だらけで社名が読めないようなトラックで公道を走るのは、「うちはだらしない会社です」と宣伝して回っているのと同じです。

  • 最低限、週1回は洗車する:
    特に重要なのは「足元(タイヤとホイール)」です。ここがきれいだと、全体が締まって見えます。おしゃれは足元から、は車も同じです。
  • 荷台を整理整頓する:
    道具や資材がぐちゃぐちゃに積み込まれていませんか? いつ誰に見られても恥ずかしくないよう、整理整頓を徹底させてください。これは作業効率の向上にもつながります。
  • 車内のゴミを捨てる:
    ダッシュボードにコンビニの袋や空き缶が散乱していませんか? フロントガラス越しに見える車内が汚いと、全てが台無しです。

② 作業着・身だしなみ:プロとしての「誇り」をまとえ

作業着は「汚れてもいい服」ではありません。プロの技術者が身につける「戦闘服」です。

  • 破れ、ほつれ、ボタン落ちは論外:
    安全上も問題があります。すぐに補修するか、新しいものに交換させてください。
  • 洗濯は毎日が基本:
    泥や汗で汚れるのは仕方ありません。しかし、前の日の汚れがそのまま残っている作業着を着て現場に来るのは、プロ失格です。「清潔感」は最低限のマナーです。
  • 「着こなし」を正す:
    かかとを踏んだ安全靴、だらしなく出したシャツの裾、腰パン…。これらは「かっこいい」のではなく、ただ「だらしない」だけです。特に若い職人には厳しく指導してください。

▼ 関連記事:若手職人の指導に悩んだら
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③ 現場・休憩所:「来た時よりも美しく」を徹底せよ

現場は「施主様からお借りしている場所」です。

  • 資材の直置き厳禁:
    必ず養生シートを敷き、整理して置く。これだけで現場の景色が変わります。
  • 休憩所の美化:
    タバコの吸い殻、空き缶、弁当の空き箱…。休憩が終わったら、チリ一つ残さず片付ける。喫煙マナーも徹底させてください。指定場所以外での喫煙は、一発で出入り禁止になるリスクがあります。
  • 一日の終わりの「完全清掃」:
    作業が終わったら、道具を片付けるだけでなく、現場全体を掃き清める。「来た時よりも美しくして帰る」を合言葉にしてください。

3. 職人の反発をどう乗り越えるか?

社長がいくら笛を吹いても、現場の職人たちが動かなければ意味がありません。
きっと、「うるせぇな、仕事の邪魔すんな!」という反発があるでしょう。

どうやって彼らを納得させるか。ポイントは3つです。

① 「おしゃれ」ではなく「プロ意識」の問題だと定義する

「かっこつけろ」と言うと反発します。「プロとして、舐められないための武装をしろ」と伝えてください。
「お前らの腕が一流なのは俺が一番知ってる。だからこそ、見た目で損をするのが許せないんだ。悔しくないのか!」と、彼らのプライドに火をつけてください。

② 社長が率先垂範する

社長自身が、ヨレヨレの作業着を着て、汚い車に乗っていませんか?
まずは社長が、誰よりもパリッとした作業着を着て、ピカピカの車で現場に現れてください。そして、誰よりも先に現場のゴミを拾ってください。
トップの背中が変われば、現場は必ず変わります。

③ できた人を評価する

口で言うだけでなく、トラックをきれいにしている職人、身だしなみがきちんとしている職人を、朝礼などで具体的に褒めてください。
人事評価の項目に「整理整頓・身だしなみ」を加え、ボーナスに反映させるのも効果的です。

▼ 関連記事:納得感のある評価制度の作り方
No.65 「あいつの方が給料が高いのはおかしい」と職人が揉め始めたら。不満を生まない、建設業専用「評価制度」の作り方

まとめ:「見た目」を変えれば、会社が変わる

建設業は、3K(きつい、汚い、危険)と言われてきました。
しかし、私は声を大にして言いたい。

仕事の内容が「きつい・危険」なのは仕方ないとしても、「汚い」かどうかは、自分たちの心がけ次第で変えられるはずです。

きれいな現場には、良い仕事が宿ります。
きれいな会社には、良いお客様が集まります。
そして、きれいな職人のもとには、良い人材(若手)が集まってくるのです。

社長、「たかが見た目」と侮ってはいけません。
その薄汚れたトラックのボディを磨くことは、あなたの会社の「未来」を磨くことそのものなのです。

さあ、まずは明日の朝一番、会社の駐車場にあるトラックのタイヤを、社長自らの手で洗ってみませんか?
そこから、全ての改革が始まります。


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