黒字でも資金が足りない理由｜建設業のキャッシュ改善法

「利益が出ているのに資金が足りない」──これは建設業で最も多い財務課題のひとつです。 ここでは、黒字倒産が起きるメカニズムと、資金改善のための具体的手法を建設業専門コンサルティングの視点で解説します。

1. 黒字なのに資金が足りなくなる構造

会計上の黒字とは「売上−費用」であり、実際のキャッシュフロー（入出金の動き）とは異なります。 特に建設業は「支出先行・入金後追い」の構造が多く、キャッシュギャップが発生します。

2. 建設業に特有のキャッシュフローリスク

• 材料費・下請け支払いの前倒し支出
• 請求から入金まで平均90日以上
• 変更工事・仕様変更に伴う追加コスト
• 複数現場同時進行による運転資金の逼迫

3. キャッシュ不足が招く経営リスク

• 従業員給与・下請け支払いの遅延
• 仕入先との信用低下・条件悪化
• 銀行格付けの低下 → 融資条件悪化
• 黒字倒産（資金ショートによる破綻）

4. 資金繰りを改善する６つの実践策

1. 契約時に着手金・中間金を設定する（支出と入金を同期させる）
2. 請求・回収を標準化し、発行スピードを上げる
3. 原価見積もり精度を上げ、変更工事を即時請求へ反映
4. 運転資本（流動資産−流動負債）を可視化して管理
5. 仕入・外注条件を見直し、支払いサイトを最適化
6. 銀行格付けを上げて資金調達力を高める

5. まとめ：利益と資金の“時間差”を設計せよ

黒字でも資金が不足するのは、現金の流れを設計していないからです。 「収益性の設計」だけでなく「キャッシュの設計」を行うことで、倒産リスクを減らし、安定的な経営を実現できます。