数字で動く右腕を育てる5原則
2025年10月23日
数字で動く右腕を育てる5原則
“右腕”の定義は「意思決定を数字で補助し、現場を自走させる人材」。感覚で動くのを卒業し、管理会計とKPIで日々の判断を標準化します。本稿では、建設業に特化して、今すぐ現場で使える5つの原則とチェックリストを提示します。
原則1|KPIは「先行指標→結果指標」の二段構え
右腕の役割
社長の意思決定を素早く補助するため、先行指標(リード・アポ・入札)と結果指標(受注・粗利・回収)を分けて設計。週次でズレを検知し、月次で収束させる。
必須KPI
リード数 / アポ率 / 見積提出数 / 受注率
リード数 / アポ率 / 見積提出数 / 受注率
利益KPI
案件別粗利率(目安:25%以上)
案件別粗利率(目安:25%以上)
速度KPI
見積TAT / 受注までのリードタイム
見積TAT / 受注までのリードタイム
チェックリスト
- KPIは最大でも9個(儀礼指標を排除)
- 週次で先行指標、月次で結果指標をレビュー
- 販路別に変換率を分解(紹介/広告/テレアポ/元請紹介)
アナロジー:KPIは「道標」。先行指標は“今どの道を走っているか”、結果指標は“どこへ着いたか”。
原則2|原価・粗利は“現場着地”で締める
見積時点の予定粗利ではなく、現場完了時点の実績粗利で評価。追加工事・手戻り・外注単価の変動を工程ごとの出来高で吸収し、赤字化の早期警戒を出す。
実装ポイント
- 案件台帳に「予定/実績/差異」の3列を標準装備
- 直接材・外注費・自社工数をコード化し入力を楽に
- 粗利率アラート:20%割れで黄色、15%割れで赤
原則3|月次決算7営業日ルール
“右腕”は、翌月7営業日以内に月次決算を閉め、粗利/販管費/営業利益/CFを経営会議に提出。決算が遅い会社は意思決定も遅い。
最小セット
- 売上計上基準の統一(検収or出来高)
- 未成工事支出金・前払金の締切ルール
- 部門別損益(施工/設計/営業/管理)
原則4|資金繰りは90日予見で倒れない
キャッシュは意思決定の“酸素”。90日先までの入出金予定を毎週更新し、資金ショートの谷を早期に検知。与信・支払サイト・回収サイトで地形をならす。
ルール
- DPO(支払サイト)≧ DSO(回収サイト)を目指す
- “谷”が見えたら:前倒し請求/出来高請求/仕入条件再交渉
- 銀行との定例面談を四半期化(資料:月次PL・CF・計画)
原則5|交渉力=価格×与信×納期の三位一体
価格だけでなく、与信(取引リスク)と納期(調達余力)の3軸で交渉。銀行格付けが上がるほど条件は良くなる。右腕は価格以外の価値を言語化して提示する。
交渉の型(SPIN×利益設計)
- 問題→示唆→解決→利益の順で合意点を設計
- “総コスト最小化”を提案(手戻り率↓・検収手間↓)
- 見積は3案:標準/短納期/長期包括で価格差を明確化
ダッシュボード設計テンプレ
週次ボード
- 新規リード数 / アポ率 / 見積提出 / 受注率
- 平均単価 / 粗利率 / 受注まで日数
月次ボード
- 部門別損益:施工・設計・営業・管理
- 案件別 粗利 着地(20%/15%アラート)
- 資金繰り90日&安全水位
Excel/スプレッドシートでの実装も可能。KPI自動更新・条件付き書式で可視化。
よくある落とし穴
- “見える化”だけで止まり、改善アクションに落ちない
- KPIが多すぎて行動が分散(9個以内の原則)
- 予定粗利で自画自賛、着地で赤字を見逃す
- 月次決算が遅く、意思決定が過去志向になる
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