実際の導入事例:建設会社A社の改善プロセス 第4回
2025年9月27日
実際の導入事例:建設会社A社の改善プロセス
「黒字なのに資金が回らない」「粗利率が低迷している」――建設業界ではよく耳にする悩みです。
本記事では、実際にエスエスコンサルティングが支援した建設会社A社の事例をもとに、管理会計の導入プロセスと改善効果を徹底解説します。
現場の抵抗や失敗の壁も含めてリアルに描きますので、御社の改善のヒントにしてください。
導入前の課題:A社の現状
A社は年商15億円、従業員数約80名の中堅建設会社でした。売上規模は堅調に推移していたものの、毎年の営業利益率は2〜3%台に低迷し、資金繰りも常に不安定な状態でした。
経営者インタビューでは次のような悩みが出ていました。
- 「決算では黒字だが、なぜか毎月資金繰りに追われる」
- 「現場ごとに利益が出ているか全く分からない」
- 「経営会議では感覚論ばかりで、数字で議論できていない」
- 「銀行からの格付けも低く、融資条件が厳しい」
財務会計だけでは見えない課題が山積し、経営者は「どこから手を付ければいいのか分からない」状態でした。
管理会計導入のプロセス
A社が管理会計を導入するプロセスは、大きく5つのステップに分かれます。
- 現状把握と課題抽出:財務データ・工事データの整理
- 原価計算と粗利率の可視化:工事別損益を算出
- 部門別・現場別の管理会計資料作成:毎月の会議に導入
- 改善アクションの実施:赤字工事排除・見積精度改善
- 運用と定着:経営会議・現場教育への浸透
ステップ1:現状把握と課題抽出
まず、過去3年間の財務諸表・工事台帳・請求書を収集し、現状を分析しました。
その結果、以下の課題が判明しました:
- 売上上位10件の工事のうち、3件は赤字
- 外注費率が平均65%と高止まり
- 完成工事基準により、工事中の損益が不透明
この「見えない損益」が資金繰り不安の根本原因でした。
ステップ2:原価計算と粗利率の可視化
各工事ごとに「売上-直接原価=粗利」を算出。
すると粗利率は工事ごとに大きな差があり、最高20%、最低では-5%という赤字案件も判明しました。
この時点で経営者は「感覚ではなく数字で判断する必要性」を痛感しました。
ステップ3:管理会計資料の作成
A社のために「工事別損益計算書」と「部門別損益管理表」を設計。
毎月の経営会議で、各工事の粗利率を公開する仕組みを導入しました。
初めは現場から反発もありましたが、「数字が可視化されることで改善できる」と理解が広がり、徐々に定着しました。
ステップ4:改善アクションの実施
管理会計で得られた情報をもとに、次の改善を行いました。
- 赤字工事の受注をストップ
- 見積基準を見直し、最低粗利率10%を設定
- 外注費の集中管理を行い、比率を65%→58%に削減
- 粗利率ランキングを社内共有し、現場意識を改革
ステップ5:運用と定着
半年後には、管理会計資料が経営会議に欠かせないツールとなりました。
現場監督自身も「自分の担当工事の粗利率」を把握するようになり、利益意識が浸透。
銀行へ提出する資料にも管理会計データを組み込み、信頼性が向上しました。
A社が得た成果
管理会計導入から1年で、A社は以下の成果を得ました。
- 粗利率:7% → 11.5%へ改善
- 営業利益:3,000万円増加
- 資金繰り改善により、手元資金が月商の2.5ヶ月分に安定
- 銀行格付けが1ランク上昇、金利が0.7%低下
- 経営会議の議論が「感覚論」から「数字ベース」へシフト
経営者・現場からの声
「管理会計を導入する前は、正直“数字は経理任せ”でした。
でも今では、現場監督も自分の工事の粗利率を口にするようになり、会社全体が変わりました。」(代表取締役)
「毎月の工事別損益表が出ることで、赤字の原因を具体的に話し合えるようになりました。」(工事部長)
他社が学べるポイント
A社の事例は、同じ課題を持つ建設会社にとって多くの学びがあります。
- 管理会計は「仕組み化」しないと定着しない
- 最初は現場から反発があるが、成果が出れば理解される
- 銀行との交渉材料になるため、資金調達力が上がる
無料相談のご案内
エスエスコンサルティング株式会社では、建設業の粗利率改善・資金繰り安定化を支援しています。
無料経営診断では、御社の粗利率改善シナリオをシミュレーションし、管理会計導入の可能性をご提案します。
まとめ
A社の事例が示すように、管理会計は単なる数字管理ではなく「会社を変える経営基盤」です。
粗利率改善、資金繰り安定、銀行格付け向上――これらを実現したい経営者は、今こそ管理会計の導入を検討してください。