足場業界で人材育成はどうやる?課題や効率的な教え方を紹介
2023年8月29日足場業界は職人の高齢化・若者離れが進んでおり、多くの足場会社が慢性的な人材不足に悩まされています。
若手の人材を育成しなければ、今後はさらに人材不足が加速していくことが予想されますが、人材を育成するための具体的な方法が分からずお悩みの会社も多いのではないでしょうか。
本記事では、足場業界での人材育成の課題や効率的な教え方について解説していきます。
足場業界の人材教育を取り巻く問題
足場業界では職人の高齢化・若者離れが進んでおり、慢性的な人材不足に陥っています。原因としては、「きつい・汚い・危険」という悪いイメージに加え、若手の職人を育てるための教育プログラムや、仕事を長く続けられる環境が整っていないことが挙げられます。では、足場業界の人材教育における問題点を詳しく見ていきましょう。
業務内容が言語化されていない
足場業界は、業務マニュアルを使用せず「仕事は目で見て覚えろ」という職人ならではの教育方針で人材を育成している会社が多い傾向があります。
しかし、業務内容をほとんど理解していない状態では、現場で実際に先輩の仕事ぶりを目で見てもなかなか理解できず、仕事を覚えるのに時間がかかります。また、ベテランの技術を若手に見せる機会も工期を考えるとなかなか時間が取れないため、若手がベテランの技術を覚える機会もほとんどありません。
このように、マニュアルで業務内容が言語化されておらず、若手が仕事を覚えにくい教育体制であることが、足場業界の人材不足を加速させている1つの問題点だといえます。
評価基準がない
足場業界はさまざまな現場でスキルや経験を積み重ねていくため、一人ひとりの職人の能力を統一的に評価する仕組みがありません。そのため、スキルアップをしても処遇の向上につながらない点も人材教育における問題点といえます。
仕事をいくら頑張っても働き方や成果が会社から正当に評価されず、報酬や待遇面が変わらなければ、仕事に対するモチベーションの低下につながるでしょう。職人のモチベーションが低下すると、生産性の低下や離職率の上昇にもつながる恐れがあります。育成した若手に長く働いてもらうためには職人の能力を正当に評価する仕組みを築くことが重要です。
教育体制が整っていない
足場業界には、「仕事は目で見て覚える」という古い価値観を持っている職人が多く、若手に手取り足取り仕事を教える文化がありません。そのため、若手に業務内容をきちんと説明しないまま現場に出したり、若手に教育する際に上司や先輩が怒鳴ったりと、若手を育成するための教育・サポート体制が整っていない会社が多い傾向があります。そういった会社では、若手が仕事を覚えるのに時間がかかり、ストレスを感じやすいため、せっかく若手が入ってもすぐに退職してしまうケースが多いです。
パワハラが横行し教育しても定着しない
足場業界でパワハラが横行しやすい理由としては、主に下記の3点が挙げられます。
- 高所の作業で危険が伴うため
- 男社会で上下関係が厳しい
- 閉鎖的な仕事環境
足場業界は常に危険と隣り合わせの仕事で、ちょっとしたミスで命を落とす可能性もあります。そのため、厳しい口調で若手を指導したり、ミスに対して過剰に怒鳴ったりしてしまいがちです。また、足場業界は圧倒的に男性が多く、年功序列が当たり前な業界です。上下関係が厳しく、経験が浅い若手に対して横柄な態度をとる職人が多い傾向にあります。
上司や先輩から厳しく怒鳴られるのが当たり前の業界でもあるので、そもそも暴言や暴力をパワハラだと思っていない職人も少なくありません。また、現場の職人は外部の人間との交流が少ないので閉鎖的になりやすく、他の業界と比べると暴言や暴力などのパワハラが横行しやすいです。その結果、若手を教育してもパワハラが原因で早期離職してしまい、若手が定着しない状況に陥っているといえます。
足場業界に必要な教育体制
足場業界で若手の職人を育てて長く働いてもらうためには、新人が業務に必要な知識やスキルを覚えやすい教育体制や、現場に入ってからのサポート体制を整えることが重要です。
また、足場の組み立てや解体、変更にかかる作業に従事するためには「足場特別教育」、足場作業の指揮監督者を務めるには「足場の組み立て等作業主任者技能講習」の受講が義務付けられています。そのため、足場業界は職人全員がスムーズに資格を取得するためのサポート体制も整える必要があるでしょう。
人事評価制度
職人のモチベーション低下や若手の離職を防ぐためにも、職人一人ひとりを正当に評価するための基準を設けて人事評価制度を整える必要があります。
具体的な方法として、はじめに個々の職人がどのような成果を目指すべきか明確にするための目標を設定しましょう。目標が高すぎると職人のモチベーション低下につながるため、会社が一方的に目標を設定するのではなく、職人と話し合って達成が不可能ではない目標を設定することが大切です。
次に、設定した目標の達成度合いを測るための評価基準を設定します。その際には客観的な数値目標だけでなく、コミュニケーション能力やリーダーシップなどの質的な評価基準も設定しましょう。また、評価基準も役職や経験に応じて柔軟に設定し、職人全員が公平に評価される仕組みを作ることが大切です。
業務のマニュアル化
業務マニュアルがあれば、口頭で1から10まで業務内容や重機・工具の使い方などを説明する必要がありません。効率的に人材教育ができるようになり、定着率も高まるメリットがあります。
また、足場業界では外国人労働者の増加が著しい傾向にあり、口頭や文字による教育では理解に時間がかかってしまいます。しかし、イラストを用いた業務マニュアルがあれば、日本語がほとんど分からない外国人労働者にも業務内容を理解してもらいやすくなるでしょう。
教えられる側も空き時間に業務マニュアルを見て予習できるので、理解を深めやすくなります。また、何か分からないことがあれば先輩に質問なくても業務マニュアルで疑問点を解決できる点も大きなメリットです。
資格取得の教育・支援
足場作業に関係する資格としては、主に「足場特別教育」「足場の組み立て等作業主任者技能講習」の2つが挙げられます。これらは足場の作業員や現場のリーダーを育成するうえで必須となる資格です。そのため、資格の勉強や取得にかかる受講料を会社でサポートするなどの教育・支援体制を整えるべきだといえます。
足場特別教育とは、足場からの転落や墜落、組み立て不足による倒壊などの労働災害を防止するための講習で、2015年7月1日から足場の組み立て・解体・変更にかかる作業員全員に実施が義務付けられています。受講時間は、2015年7月1日時点で足場の組み立て・解体・変更の業務に従事した経験があるかどうかで以下のように異なります。
- 業務に従事した経験がない場合:6時間
- 業務に従事した経験がある場合:3時間
講習料金は、3時間講習の場合は7,000円前後、6時間講習の場合は10,000円前後が相場です。
対して足場の組立て等作業主任者技能講習は、足場の作業現場での指揮監督者を養成するための講習です。
現場には指揮監督者を配置することが法律で義務付けられており、配置できなければ足場作業自体ができません。講習は2日間にわたって行われ、1日目は7時間の講習、2日目は6時間の講習と修了試験が行われます。受講料はテキスト代込みで12,000~13,000円が相場です。
OJTの確立
OJTとは先輩が後輩に対し、実務を通じて業務に必要な知識やスキルを教える教育方法の1つです。足場業界では、「仕事は目で見て覚える」という古い価値観が根付いているため、上司や先輩からまともに仕事を教わらないまま若手が早期退職してしまうケースが多くあります。
OJT制度を導入し、先輩が後輩に実務を通じて仕事を教える体制を整えれば、若手は実践的なスキルやノウハウを効率的に習得でき、自信をもって仕事に取り組めるようになります。また、先輩とコミュニケーションをとりながら仕事を教わるので、先輩との人間関係を築きやすくなるのも大きなメリットです。OJTを通じて仕事や人間関係への不安を和らげられるため、結果的に人材の定着率向上につながります。
ハラスメント研修の実施
教育途中のパワハラで人材が定着するのを避けるには、ハラスメント研修の実施が効果的です。そこで、会社で定期的にハラスメント研修を実施し、職人1人ひとりがパワハラについて正しく理解することが重要になります。
パワハラに該当する行為や、パワハラはやってはいけない問題行為であることをきちんと理解させれば、パワハラの発生を未然に防げます。パワハラが減れば若手の仕事に対するストレスも減少するため、人材の定着にもつながりやすくなるでしょう。
足場業界の教育を経営コンサルタントに依頼すべき理由
足場業界で人材を育成する場合は、人材教育を経営コンサルタントに依頼するのがおすすめです。その理由としては次の3点が挙げられます。
- 過去の事例を元に教育プランを作ってもらえる
- 第三者視点で人材育成をしてもらえる
- 教育以外の経営課題を抽出してもらえる
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
過去の事例を元に教育プランを作ってもらえる
経営コンサルタントはさまざまな規模・業種の会社のプロジェクトに携わっているため、人材教育における課題の解決方法やノウハウが豊富です。経営コンサルタントに依頼すれば、これまで築き上げてきたノウハウや過去の成功事例を元に、それぞれの会社に合った教育プランを作ってもらえます。自力で教育プランを考えるよりも、経営コンサルタントに作ってもらった方が優秀な人材が育ちやすく、手間もかからないためおすすめです。
第三者視点で人材育成をしてもらえる
経営コンサルタントは、現在の教育体制や評価制度の問題点だけでなく、幹部と現場の認識のズレなど第三者ならではの視点でアドバイスをしてくれます。そのため、社内だけでは見つからなかった人材育成における問題を解決しやすくなるのも大きなメリットです。
また、現場の人間ではなく幹部の人材育成もしてもらえます。現場の管理は幹部社員の仕事なので、幹部社員が未熟では現場でも優秀な人材は育ちません。社内全体の人材育成をしてもらい、優秀な人材が育ちやすい環境を整えましょう。
教育以外の経営課題を抽出してもらえる
会社の経営において、人材教育だけでなく人材確保や営業力の強化、売上・利益の向上など課題は山ほどあります。会社を成長させるには現状を分析して課題や情報を洗い出し、改善に向けて取り組む必要がありますが、社内のみの目線では見つけられる課題や情報に限界があるでしょう。経営コンサルタントを依頼すれば、第三者ならではの視点で多くの課題を見つけ出してくれるので、さらなる業績アップや業務の効率化が期待できます。
足場業界へのコンサルティング事例
ここでは、足場業界へコンサルティングを行った事例を3つご紹介します。実際に改善した事例と現在の社内の様子を照らし合わせて、コンサルティングが必要か判断することをおすすめします。
事例1:A社
- 課題
年商3億円の売上であり、数年間売上が伸び悩んでいた。原因として、社員の離職が挙げられており、「やりがいを感じられない」「将来のキャリアパスが想像できない」といった声が出ていた。離職者を減らし、従業員が定着する環境を作りたい。
- 施策
人事考課制度を展開し、各従業員のどこを評価し、課題は何なのかを見える化した。目的として、各従業員が目的なく業務にあたっている状況を打破し、理想のキャリアパスを歩めるようにすること。
- 結果
各従業員の課題が明確化し、各従業員に目標を立ててもらい、実行してもらうことに成功した。
その結果、各従業員は仕事にやりがいを見出せて、充実した心持ちで業務にあたってもらえている。
施策後、1年が経過しても離職者はでず、売上も1.5億円アップしている。
当初売上を2年で5億円、5年後に10億円を目標があったが達成できそうで、施策に非常に満足してくれている。
事例2:B社
- 課題
仕事があるにもかかわらず、人が足りず採用も上手くいかないため、仕事を増やせない。人手不足を解決するために、採用をしたいがどのように進めて良いかわからない。
従来型の採用方法が、現代の人材に合致しないため、ベストな採用方法を知りたい。
- 施策
SNSを使った採用支援を提案し、現在の採用の課題をヒアリング・分析を行い採用支援を実施。過去の実績をもとに応募文章の提案、ABテストの実施を行い採用の成功を目指した。
- 結果
SNSを使った採用を行ったことにより、計5名の採用に繋がった。採用支援だけではなく、経営会議の支援も行い各社員のモチベーションアップにもつなげた。従来から目的意識が高い職人さんが多かったため、売り上げ向上にも繋がり1年間で年商が4億円から5.5億円に向上した。
事例3:C社
- 課題
資金繰りに困っており、職人の給与の支払いや設備投資等への支払いが難しくなっていた。資金調達を進め、事業拡大を進めたい。融資や投資のほかに、助成金獲得までの道筋も作ってほしい。
- 施策
銀行への資金調達のための事業計画書の支援及び、銀行対応を支援した。助成金の
獲得のための申請補助も実施。目標金額の獲得後、売上拡大のためにロードマップを引いた。
- 結果
銀行からの資金調達に成功し、経営の持ち直しにも繋がった。助成金も受けられたため、資金繰りの悪化の改善に繋げられた。その後、当初は深刻な資金難の状態から、売上右肩上がりの状態にまで回復。固定費削減のために、レンタルではなく自社で資材を保有したい要望に対し、足場の資材置き場を自社で保有できるように支援。場所も大枠決まり、近い未来に自社材を使った工事を実施できる。
人材育成に困っている足場会社はエスエスコンサルティングに相談
足場業界での人材不足や高齢化が進んでいるのは、業界自体の文化や労働環境、不十分な教育体制や評価制度が原因として挙げられます。若手の職人を育てるためには、業務に必要な知識やスキルを習得するための教育体制や、現場に出てからも安心して仕事をするためのサポート体制を整えることが必要です。エスエスコンサルティングでは、足場業界の人材育成に関するコンサルティングも行っているので、ぜひお気軽にご相談ください。