現場を変えたいなら、まず「資本構造」を変えろ
2025年6月3日
現場を変えたいなら、まず「資本構造」を変えろ
「現場が動かない」「社員の意識が変わらない」── 経営者が抱える多くの問題は、実は“現場ではなく資本構造の問題”です。 現場を叱っても、制度を整えても、借入過多・内部留保不足の会社は変わりません。 外資系コンサルティングの視点から、建設業における資本構造改革の本質を解説します。
1. なぜ「現場改革」がうまくいかないのか
建設業では、経営者が「現場を良くしたい」「社員を変えたい」と口にします。 しかし、現場を変えようとする前に、会社の資本構造を見直すべきです。 資本構造とは、企業がどのようにお金を集め、どのように使っているか──つまり経営の骨格です。
現場にプレッシャーをかけても、資本構造が脆弱であれば、現場は改善できません。 たとえば、借入金が多く、支払いサイトが長く、利益を内部に蓄積できない会社では、 現場は常に「資金不足」と「納期圧力」に追われます。 これは意識の問題ではなく、構造の問題なのです。
2. 資本構造とは何か──経営の“背骨”を理解する
外資系コンサルティングでは、企業を「P/L(利益構造)」「B/S(資本構造)」「C/F(キャッシュ構造)」の3層で捉えます。 このうち、日本の中小企業が最も弱いのがB/S=資本構造です。
| 項目 | 健全な会社 | 脆弱な会社 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 30〜40% | 10%未満 |
| 借入金依存度 | 1年以内返済比率20%以下 | 短期借入が多く資金繰り不安定 |
| 内部留保 | 年間粗利の30%以上を積立 | 利益が出ても役員報酬・支払いで消滅 |
| 運転資金 | 2ヶ月分の売上を保持 | 支払サイトより短く常時ギリギリ |
つまり、「現場改善」よりも先に、経営者が資本の流れを制御することが最優先なのです。 経営の構造が整っていない会社は、現場がどれだけ努力しても利益が残りません。
3. 現場を縛る“資本の鎖”──見えない構造の支配
多くの建設会社では、赤字現場の原因を「見積りの甘さ」「工期の遅れ」と分析します。 しかし、外資系コンサルタントの目で見ると、真因は別にあります。 それは資本の設計ミスです。
具体的には、以下のような構造が現場を苦しめます:
- 借入金の返済スケジュールが短く、現場がキャッシュ確保のために安請け合いする
- 下請比率が高く、粗利が薄いために内部留保が貯まらない
- 支払いサイトが長く、協力業者への支払いが遅れ、関係が悪化する
- 営業利益が出ても、銀行返済で消えるため設備・教育に回せない
こうした構造は、経営者が資本構造を“戦略的に設計”していないことから生まれます。 つまり、現場を救うには経営のキャッシュフロー設計を変えるしかないのです。
4. 経営が行うべき「資本構造改革」3ステップ
① 自己資本比率の引き上げ
まず取り組むべきは、自己資本比率の改善です。 借入金依存を減らし、返済と資金繰りに余白を作ることが第一歩です。 内部留保を積み上げ、会社を“耐久体質”に変える。 それが現場の心理的安全性を高め、挑戦を生む環境になります。
② キャッシュフロー経営の導入
経営者が毎月「現預金残高」「入出金予定」「工事別資金繰り」を可視化し、 先手の支払い・先読みの回収を習慣化します。 これにより、現場が“お金の不安”から解放され、計画的な施工が可能になります。
③ 金融機関との関係性再構築
借り方ではなく、付き合い方を変える。 格付けを上げ、長期借入・低金利・信用保証枠を確保することで、 会社の資金ポジションを安定させる。 これが「財務が現場を守る」構造改革です。
5. 資本構造を変えた会社の変化
SSコンサルティングの支援先である某中堅建設会社(年商3.2億円)は、 2年間で以下のような変化を実現しました。
| 指標 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 8% | 32% |
| 粗利率 | 18% | 26% |
| 月末資金残高 | +50万円 | +980万円 |
| 格付け | 6 | 8(銀行ランクA-) |
この会社では、経営者が「借入→返済」の視点から脱却し、 “借入→投資→利益再投資”という資本循環モデルを導入しました。 その結果、現場への投資が増え、社員教育・営業強化・システム導入が進み、 現場の生産性が一気に上がりました。
6. 資本構造改革は“現場改革”の前提条件
現場を変えるとは、作業手順を変えることではありません。 会社が「お金の流れ」を変えることです。 資本構造が健全になれば、現場は自然と変わります。
- 資金の余裕 → 工期に余裕が生まれ、安全と品質が向上
- 内部留保の増加 → 設備投資・教育投資が可能に
- 財務安定 → 人材採用や取引先信用が強化
つまり、現場の課題の9割は、財務構造が作っているのです。 経営者が変えるべきは「人」ではなく「仕組み」、その起点が資本構造なのです。
7. 現場を変える“資本設計図”をつくる
SSコンサルティングでは、外資系コンサル出身者・金融機関出身者・CFO派遣メンバーが、 建設業のための資本構造改善・財務設計支援を行っています。 粗利を増やす前に、まず「資本構造」を整える。 これが黒字体質への最短ルートです。
提供内容:資本構造診断/格付け改善シート/財務モデリングテンプレート/CFO派遣サービス