公共事業における労務単価の上昇|建設業界が取るべき対応と今後の見通し
■ はじめに:なぜ労務単価が上がっているのか?
近年、国や自治体が発注する**公共事業における労務単価(公共工事設計労務単価)が毎年のように上昇しています。
2024年も全職種平均で前年比+4.2%**と、大幅な引き上げが行われました。
背景には以下のような要因があります:
•建設現場の人手不足
•技能労働者の高齢化
•若手が入職しない構造問題
•働き方改革の影響で長時間労働が制限
これらを改善するため、国は賃金の底上げを図り、建設業の待遇改善を進めています。
■ 労務単価の上昇が建設会社に与える影響
労務単価が上がることは、現場で働く人々にとっては歓迎すべきことですが、建設会社側には以下のような影響があります。
1. 見積もり・積算におけるコスト増
公共工事の積算は国の労務単価をもとに組み立てられます。
しかし、下請け企業への実際の支払いとの乖離があると、利益圧迫のリスクが発生します。
2. 民間工事への波及
公共事業だけでなく、民間工事の人件費も上昇傾向にあります。
その結果、受注競争の中で価格を据え置いたままでは、採算が合わなくなる恐れがあります。
3. 元請けからの単価交渉が困難に
元請けが公共工事ベースでコストを見ている場合、下請けに対して十分な単価を提示できないことも。
これが中小企業の経営を苦しめる構図を生んでいます。
■ 下請け建設会社が取るべき具体的な対策
1. 最新の労務単価を把握し、価格交渉に活かす
国土交通省や各地方整備局の情報を定期的に確認し、自社の見積もり根拠として提示できるように準備しましょう。
2. 人件費高騰を踏まえた利益設計
従来の“ギリギリ価格”ではなく、適正な粗利を確保できる受注戦略を立てる必要があります。
「取ってから考える」ではなく、「利益が出る案件を選ぶ」視点が求められます。
3. 元請けとの信頼関係構築と単価交渉
ただ安く受けるのではなく、「高品質」「人材の安定供給」などの価値提供によって単価交渉の材料を増やすことが重要です。
■ 今後の見通しと中小建設業の生き残り戦略
労務単価は今後も上昇傾向が続くと見られています。
中小・下請け建設業者が生き残るためには、「価格競争」から「価値競争」への転換が急務です。
以下のような経営判断が鍵になります:
•人材教育への投資(離職防止・技術力向上)
•Web・SNSを活用した元請け直営業
•高単価で安定した公共案件への参入
•コンサルティングや専門家との連携による経営強化
■ まとめ
公共事業における労務単価の上昇は、業界全体にとって避けられない流れです。
その中で、適正な価格で受注し、確実に利益を確保する体制づくりが中小企業に求められています。
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