金融機関との正しい付き合い方|中小建設業が“信頼される会社”になるための実践マニュアル
2025年7月19日
はじめに|エスエスコンサルティングの鈴木です
「お金を借りる」だけが、金融機関との関係だと思っていませんか?
建設業の現場では、資材高騰・賃上げ圧力・支払いサイトの長期化など、目に見えない資金のリスクが積み上がりつつあります。
その中で、金融機関との関係を“その場しのぎ”で済ませてしまう会社と、“戦略的に付き合っている会社”では、数年後に大きな差が生まれます。
本記事では、銀行・信用金庫・日本政策金融公庫など金融機関との関係構築に必要な視点と行動を、実例を交えながらわかりやすく解説します。
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第1章|金融機関との関係構築が“経営戦略”になる理由
1-1. 経営資源「ヒト・モノ・カネ」のなかで、最もコントロールしにくいのが「カネ」
多くの経営者は「人手不足」「施工能力」「案件の受注」に注力します。
しかし、資金調達ができなければ、人も設備も成長戦略も動きません。
1-2. 金融機関は“審査する相手”ではなく“伴走する相手”
従来の「借りたら返すだけ」「必要なときにだけ相談する」付き合い方では、いざというときの支援は受けられません。
経営者として必要なのは、“信用残高”を平時から積み上げておくことです。
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第2章|金融機関はどこを見ているのか?“信用の審査ポイント”を理解する
2-1. 定量情報(数字)
•決算書3期分
•直近の試算表(月次)
•売上推移と粗利構造
•借入残高・返済状況
•資金繰り表(今後3ヶ月~1年)
2-2. 定性情報(印象と行動)
•経営者の人柄・理念・言葉選び
•約束を守る姿勢
•提出物のスピードと精度
•「課題に向き合う力」があるか
📌 重要ポイント
「経営がうまくいっていないとき」に、どう行動できるかを見られています。
赤字そのものではなく、“説明力・改善力・責任感”が信用につながります。
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第3章|銀行・信金・政府系金融機関、それぞれの特徴と付き合い方
種類 主な特徴 向いている企業
地銀・信金 地域密着、顔が見える関係 地場での施工業者、付き合い重視の企業
都市銀行 資金規模が大きく審査は厳しめ 複数支店・億単位のプロジェクトがある企業
政策金融公庫 創業・再生・コロナ支援
など制度多彩 創業期/資金繰り不安時の強力な支援先
信用保証協会 融資を保証する公的機関 初回融資/自己資本の薄い企業向け
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第4章|金融機関と“信頼関係”を築くための5つの行動原則
4-1. 定期訪問(借入がなくても年2回以上)
「決算が出たタイミングで1回」では不十分。
最低でも上期・下期に1回ずつの経営報告が望ましい。
👉 提出すべき資料例:
•試算表(PDFでもExcelでも可)
•売上推移と案件報告
•経営計画書(A4一枚でOK)
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4-2. 嘘をつかない・隠さない
「とりあえず内緒にしておこう」→バレた瞬間に信頼ゼロ。
誠実に報告し、「相談できる経営者」と思われることが命綱です。
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4-3. 書類の提出・返信は即日対応
メールの返信が遅い、書類提出がギリギリでは「会社全体がルーズ」と評価される恐れあり。
金融機関が重視するのは、**「スピード=経営の意思」**です。
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4-4. 経営計画書は“数字よりも行動”を明確に
高すぎる売上目標よりも、
•どの取引先を深耕するか
•新たに何を始めるか
•現場の管理体制をどう見直すか
といった「行動ベース」の計画が信頼されます。
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4-5. 借入の前に“相談”する
いきなり「いくら貸してください」ではなく、
•なぜ今資金が必要なのか
•どんな未来を描いているのか
•どんなリスクを想定しているか
を事前に対話できる関係性があれば、審査の温度は変わります。
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第5章|金融機関が支援したくなる「見える化」資料とは?
資料 解説
試算表(月次) 今の状況がわかる。最低でも3ヶ月更新を
資金繰り表 「いつ・いくら必要か」が明確に
営業案件報告書 見込み受注・客先リストが入っていると◎
借入一覧表 複数借入の全体像を共有
経営計画書 定性+定量+リスク想定がバランスよく
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第6章|失敗事例から学ぶ、金融機関とのNG対応
❌ 書類を出さずに「数字は大丈夫です」と口頭だけで伝える
→「この会社、何か隠してるのでは?」と警戒される
❌ 自社の赤字を他責にする(例:取引先のせい、景気のせい)
→「改善する気がない」と受け取られる
❌ 必要になったときにだけ連絡する
→「都合のいいときだけ来る社長」は支援されない
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第7章|いざという時に頼れる会社になるには?
金融機関との付き合いとは、
いざという時に「この会社は救う価値がある」と思ってもらえるかどうか。
これは、
•数字の大小ではなく、
•関係性の深さ、
•情報の共有度、
•経営者の本気度
で決まります。
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おわりに|“信頼される会社”は、日常の姿勢で決まる
経営において最大の武器は「信用」です。
それは取引先との関係だけでなく、金融機関との信頼構築にも表れます。
あなたの会社が、「いざというときに支援される会社」になるよう、今日から一歩ずつ、“信頼残高”を積み上げていきましょう。
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次の一歩は、経営者としての“問い”を持つことから。
「我が社は、いま銀行対策をどう進化させるべきか?」
その問いに、私たちは共に向き合います。
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