
年商1億から2.5億へ ― 「下請けの味方」インサイドセールスが拓いた成長軌跡【成功事例/詳解】
元請紹介に特化した“下請けの味方 インサイドセールス”の導入で、年商1億 → 2.5億まで到達した中堅建設会社の事例を、数字の分解・運用手順・KPI設計・現場キャパ・キャッシュフローまで丸裸にします。
1. 企業背景と課題
- 地方の中堅建設会社・従業員20名規模。年商は長年1億前後で横ばい。
- 獲得手段は紹介頼み。営業専任不在で、社長が都度対応。
- 受注は“価格比較”に晒されがちで、粗利は18%前後まで低下。
方針はシンプル。「見積競争」ではなく“相性の良い元請”を毎月定常供給し、交渉の主導権を取り戻す。そのために外部の「下請けの味方」インサイドセールス(以下、IS)を配置しました。
2. 戦略設計:何を増やし、何を減らすか
増やす(Do More)
- 元請の“困り事”別リスト化(工種×工期×金額帯×品質基準)
- 相談型アウトリーチ(“営業”ではなく工期と品質の不安解消)
- 案件適合度スコア(Fit)による紹介の品質担保
減らす(Do Less)
- 無差別テレアポ/闇雲な商談創出
- 低単価案件への追随(割引要請は理由なき限り応じない)
- 現場キャパ超過による“粗利食い”
3. 売上インパクトの数式分解(1億 → 2.5億の内訳)
追加売上は次式で設計します:
追加売上 = 紹介数(月) × 商談化率 × 受注率 × 平均案件単価 × 12ヶ月
ケース実績(ベースライン)
- 紹介数(月):4.2件(3〜5件の中間)
- 商談化率(紹介→商談):65%
- 受注率(商談→受注):27%
- 平均案件単価:1,700万円
計算:
項目 | 数値 |
---|---|
年間紹介数 | 4.2 × 12 = 50.4件 |
年間商談数 | 50.4 × 65% = 32.8件 |
年間受注数 | 32.8 × 27% = 8.9件 |
追加売上 | 8.9件 × 1,700万円 = 約1.51億円 |
結論:既存の1億円に、IS経由の約1.5億円が上乗せされ、年商2.5億円へ。
粗利の変化(価格競争からの離脱)
区分 | 売上 | 粗利率 | 粗利額 |
---|---|---|---|
既存ビジネス | 1.0億 | 18% | 1,800万円 |
IS由来(新規元請) | 1.5億 | 24% | 3,600万円 |
合計 | 2.5億 | — | 5,400万円 |
価格競争の比重が下がり、粗利は3倍に近い伸び。ISの価値は“売上拡大”よりもむしろ利益質の改善に表れます。
4. 運用90日ロードマップ(実装手順)
- 0–2週|適合度(Fit)定義:工種・金額帯・工期・品質基準・支払いサイトで元請ペルソナを決め、NG条件も明文化。
- 3–4週|リスト生成:建設種別×発注頻度×案件規模で優先度付け。最低200社をA/B/Cに階層化。
- 5–6週|相談型スクリプト:営業色を排し、「工期・品質・応援手配」起点に課題聴取。
- 7–8週|初期波状アプローチ:電話→直後メール→1週間後フォロー。要件確定の簡易フォーム運用。
- 9–10週|案件レビュー会:週次で失注理由を分類(工期・価格・資格・保証)。次のトーク修正。
- 11–12週|再現化:勝ちパターンを台本・テンプレ・チェックリスト化。属人ゼロに。
5. KPI設計とダッシュボード
追う数字は“少なく・強く”。
- 紹介数(月):A/B/C別(質を崩してまで件数を追わない)
- 商談化率:紹介→課題ヒアリング完了
- 受注率:商談→契約(相見積の有無を分解)
- 平均単価・粗利率:金額帯×工種で箱ひげ
- キャパ消費率:人員×工期×同時並行数
週次レビューは「仮説→検証→更新」の3枚スライドで十分。勝因・敗因は名詞で記録(例:工期遅延リスク/第三者検査/一次下請限定)。
6. 現場キャパ・粗利・工期の整え方
- 平準化:月別ガントで同時並行本数の上限を設定(例:最大3件)。
- 外注ネットワーク:繁忙期だけの応援協力会社を2社確保(単価・検査基準は事前合意)。
- 粗利防衛:必須条件を見積の1枚目に記載(品質基準・検査回数・是正ループ回数)。
- 契約前チェック:支払サイト/出来高/追加工事の定義と単価表を添付。値引き要請には交換条件(工期柔軟性等)を。
7. キャッシュフローを先に良くする
- 前受金30%:着工前に材料確保費として合意(相見積下でも説明が通る“品質確保”名目)。
- 出来高請求:2週間/1回の短サイクル精算を標準化。
- 検収基準の明文化:曖昧な是正ループでの赤字化を防止。
売上拡大は運転資金の膨張を伴います。IS導入と同時に資金導線を整えるのが鉄則。
8. 元請向けショートスクリプト(相談型)
「〇〇工種で工期と検査の両立に困るケース、直近でありませんか?
当社は“短工期×検査順守”の案件で手戻り率が低いのが強みです。
いま2〜3枠なら応援可能なので、要件だけ3分で伺って適合すれば見積を即日出します。」
ポイント:営業トーク禁止。課題→強みの順で“安心”を先に置く。
9. よくある反論と返し
- 「他社より高い」:検査回数・是正回数・手戻り率の差で総コスト提示。「安さ」ではなく再工事率で比較。
- 「今は足りている」:繁忙ピークの応援枠提案。“混む月の穴埋め専任”ポジションを取る。
- 「決裁が遅い」:材料・人員確保の期限を提示して意思決定を促す(期限=相手の利益保全)。
10. まとめ/まずやる3点
- 適合度(Fit)を数値化:金額帯・工期・品質基準・支払条件でペルソナを固める。
- 相談型スクリプト:営業色ゼロ。課題→強み→即時見積。
- KPIは5指標:紹介数・商談化率・受注率・平均単価・キャパ消費率。
社長の声
「毎月、相性の良い元請との出会いが持続することで、価格競争から解放されました。
数字が動き出すと社員の表情も変わり、2年で2.5倍の手応えに到達しました。」