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黒字でも資金が尽きる?建設業が資金繰り表で倒産を防ぐ実践法

2025年10月22日
銀行格付けを上げる決算書の作り方|融資交渉を有利に進める財務整理術

建設業 / 銀行格付け

銀行格付けを上げる決算書の作り方|融資交渉を有利に進める財務整理術

格付けは「運」ではなく「設計」。月次決算の精度とBS/PLの“見せ方”で、与信は変えられます。

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1. なぜ「決算書の作り方」で格付けが変わるのか

格付けは「結果」ではなく「結果を作るプロセス」。
期末だけでなく、通期の管理会計が“説得力のある決算書”を作ります。

  • 信頼性 月次決算の締め速度と精度(誤差±1〜2%)は最重要。試算表の再現性が高い企業は格付けで有利。
  • 一貫性 原価計算・引当金・減価償却の方針が通期でぶれないこと。臨時処理の多用はマイナス評価。
  • 将来性 受注残・見込先・粗利率の改善トレンドを示し、定量(KPI)で説明できること。

2. 格付けに効く5大KPIと計算式

自己資本比率
自己資本 ÷ 総資産 × 100
目安:20%→30%+を中期目標に。
債務償還年数
有利子負債 ÷(税引後利益 + 減価償却)
目安:10年以下、理想は5〜7年
営業利益率
営業利益 ÷ 売上高 × 100
建設系は5%→8%+へ段階改善。
インタレスト・カバレッジ
(営業利益 + 受取利息)÷ 支払利息
目安:3.0倍以上
EBITDAマージン
EBITDA ÷ 売上高 × 100
借入余力の説明で有効。10%超を目標。

銀行格付けの一般的な目安(参考)

指標弱い標準強い
自己資本比率<10%10〜30%>30%
債務償還年数>15年7〜15年<7年
営業利益率<3%3〜7%>7%
インタレストカバレッジ<1.5倍1.5〜3.0倍>3.0倍

※ 各金融機関の内部基準により評価は異なります。上記は一般的な目安です。

3. BS/PLの改善ポイント(建設業特有の論点)

3-1. 原価計算と出来高基準

  • 工事進行度(出来高)の認識を月次で合わせ、未成工事支出金・未成工事受入金を適正化。
  • 外注比率を工程別に可視化し、粗利率のばらつきを施工管理会議で是正。

3-2. 在庫・棚卸資産の評価

  • 長期滞留資材の評価減(洗い替え)をルール化。棚卸差異は±1%以内。
  • 抱え工事の資材先行仕入は案件紐付けで即時費用化の可否を検討。

3-3. 減価償却と投資計画

  • 税務上最短での償却と、銀行説明用のEBITDA視点を両立。
  • 車両・重機の更新は粗利率・安全・採用への波及効果を定量化。

3-4. 引当金・臨時損失の扱い

  • 工事保証・クレーム見込みは基準表を整備し恣意性を排除。
  • 特損は将来損益の軽量化とセットで説明(翌期の改善KPIと対で提示)。

3-5. 役員貸付金・関係会社取引

  • 役員貸付は返済計画(期中返済)を提示。実体資金の滞留はマイナス。
  • 関連当座やグループ間取引は相殺表で透明化。
ワンポイント:「一度の黒字」より「継続可能な黒字」。
原価・在庫・引当の運用ルールモニタリングを文書化して提示しましょう。

4. 月次決算の運用設計:90日で精度を上げる

期間やること成果物(銀行提示可)
Day 1–30 勘定科目設計・工事台帳テンプレ刷新・外注/材料のコード統一 統一科目表・原価集計ルール・締切スケジュール
Day 31–60 出来高の月次反映(監督承認フロー)・棚卸手順を動画化 出来高承認ワークフロー図・棚卸チェックリスト
Day 61–90 誤差分析(試算表 vs 実棚)・KPIダッシュボード運用 月次決算レポート(誤差±1〜2%)

5. 決算前3か月アクション計画

  1. T-90:抱え工事件数と進捗率の見直し(工期延伸/短縮の影響を試算)。
  2. T-60:滞留売掛の回収計画、長期滞留在庫の評価見直し。
  3. T-45:社長貸付・立替金の整理、役員報酬の水準最適化。
  4. T-30:引当金の基準表と根拠資料を整備(監査対応含む)。
  5. T-15:金融機関説明資料(KPI推移・翌期予算・受注残)の確定。

6. 金融機関説明のテンプレ(図解)

① 3年KPIトレンド
  • 売上・粗利率・EBITDA・自己資本比率
  • 債務償還年数の短縮計画(10年→7年など)
② 受注残&見込先
  • 上位10件の金額・粗利率・回収サイト
  • 元請:下請 比率の改善方針
③ 原価是正ロードマップ
  • 外注比率を四半期で2pt改善(内製・標準手配)
  • 不良・やり直しの削減KPI
④ 資金繰り計画
  • 回収サイト短縮(手形→振込化)
  • 季節資金のコミットライン提案

7. 実務チェックリスト

  • 月次締め:翌月10営業日以内で確定している
  • 出来高基準:監督承認の電子フローが運用されている
  • 棚卸:長期滞留在庫の評価減ルールが明文化されている
  • 引当金:基準表+根拠ファイルが期末時点で揃っている
  • 役員貸付:期末残高がゼロまたは返済計画が提示できる
  • 資金繰り:週次キャッシュレポート(13週)が更新されている
  • 金融機関資料:KPIトレンド・受注残・翌期予算が1冊にまとまっている
ダウンロード:「銀行格付け改善チェックリスト(PDF)」は面談時にお渡しします。
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8. よくある質問(FAQ)

Q1. 決算直前でも間に合いますか?

直前の“化粧直し”よりも、出来高・在庫・引当の運用ルールを固める方が効果が大きいです。最低でも3か月前からの着手を推奨します。

Q2. 銀行へは何を持参すれば良い?

最新試算表、KPIダッシュボード、受注残リスト、資金繰り13週表、改善計画ロードマップ(A3 1枚)。

Q3. 元請開拓と格付けに関係は?

高粗利の直取引は利益率改善・回収サイト短縮に寄与。結果として債務償還年数が縮み、格付けが改善しやすくなります。

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