建設業がファクタリングを使う際の6つのデメリットと注意点【現場目線で解説】
2025年6月16日
①【契約・債権面】建設業の債権は「不確定債権」になりやすい
🔍 債権が不確定とみなされる理由
- 建設業は「工事の完成」や「検収の完了」が売掛債権発生の前提。
- 契約形態が複雑(出来高払い、一括請負、分割引渡し等)。
- 「検収書がまだ出ていない」「契約書がない」「注文書がFAXで簡略化されている」など、法的に明確な証拠が不十分な場合が多い。
⚠ ファクタリング会社が嫌がる債権の例
- 工事未完了の段階での請求書
- 発注元が公共工事で、支払いに遅れが生じやすいもの
- 売掛先が中小企業や経営不安がある元請
🧨 結果:
- 「債権が確定していない」と見なされ、買い取り不可になるか、高額な手数料が課される。
②【構造面】多重下請構造が審査を複雑にする
🔍 一般的な請負構造(例)
発注者(国・地方自治体・大企業)
↓
元請(スーパーゼネコン・大手建設)
↓
一次下請(中堅建設会社)
↓
二次・三次下請(中小建設会社・個人事業)← ファクタリング利用者
⚠ 問題点
- ファクタリング会社は「売掛債権の発生源(債務者)が誰か」を厳密に調査する必要がある。
- 売掛金の「原債権者」が誰で、その下に何社挟まっているか不透明な場合、法的トラブルを避けるために契約を拒否されることがある。
- 支払スキーム(たとえば、支払通知書が元請から出るのか、一次下請から出るのか)も審査対象。
🧨 結果:
- 書類が整っていない、契約構造が不透明 → 審査に1週間以上かかることも。
- 緊急資金の調達には向かない。
③【信用リスク】元請との関係悪化の可能性
🔍 2社間ファクタリングのリスク
- 売掛先(元請)に通知せずに資金化できるが、元請が債権譲渡を知ると不信感を抱かれる。
- 「資金繰りが苦しい会社」とレッテルを貼られる可能性がある。
⚠ 元請が嫌がる主な理由
- 「自分たちの支払債務が第三者に譲渡された」=契約違反とみなす元請も。
- 支払い手続きが煩雑になる(誰に支払えばいいか、再確認が必要)。
- 建設業界では「信用第一」「口約束でも通用する世界」であるため、信頼を失うと次の受注がなくなることも。
🧨 結果:
- 元請との信頼関係を損なう → 現場から外される、入札に呼ばれなくなる、元請からの紹介が途絶える といった営業リスクに直結。
④【資金繰り面】手数料が高く、長期的には経営圧迫要因
🔍 建設業の利益構造
- 粗利益率は10〜30%程度。中小建設業者はそれ以下も多い。
- ファクタリング手数料(2社間)は10〜25%が相場。
- 仮に1,000万円の売掛金をファクタリングに出すと、手元に入るのは750万〜900万円。
⚠ 手数料が利益を食いつぶす構造
- 利益が20%しかない場合、手数料が15%なら実質5%の利益しか残らない。
- 継続利用すると資金繰りはさらに悪化し、**自転車操業(資金繰りの先延ばし)**状態に。
⑤【契約上のリスク】リコース契約による「買戻し義務」
🔍 リコース契約とは
- 売掛金が未回収になった場合、利用者が責任を負ってファクタリング会社に返金する契約。
⚠ 建設業にありがちな回収不能事例
- 元請の倒産、支払遅延(特に民間工事や下請け中心の業者)。
- 契約不履行・工事瑕疵などによって支払いが止まる。
- 災害や人手不足で工期遅延→検収遅延→支払い保留。
🧨 結果:
- 利用者がファクタリングで得た現金を返還する必要があり、キャッシュフローが一気に破綻する危険性。
⑥【金融機関との関係】融資に悪影響を及ぼす可能性
🔍 銀行の見方
- ファクタリングを使っていることが「資金繰り難のサイン」と見なされる。
- 銀行は「安定的に資金を回せるかどうか」で融資審査を行うため、ファクタリングの常用はマイナス要因。
⚠ 銀行融資とファクタリングの競合
- 売掛金を担保に融資を受けている場合(ABLなど)、ファクタリングに出すことで担保権が競合し、契約違反となる可能性。
- 債権譲渡登記をされると、他の金融機関にその情報が知られてしまう。
✅ 建設業でファクタリングを利用する場合のポイント
問題点 | 対策 |
---|---|
債権が不確定 | 契約書・注文書・検収書・支払通知書を整備する |
元請の信頼喪失 | 元請の理解を得て、できれば3社間ファクタリングにする |
資金繰り圧迫 | ファクタリングは一時的手段とし、利益改善・原価管理を強化 |
銀行との関係 | ファクタリングの利用履歴を説明できるようにしておく |
書類不備・審査遅延 | 建設業に特化したファクタリング会社(実績ある業者)を選定 |
必要であれば:
- 建設業特化のファクタリング業者リスト(信頼性・手数料比較付き)
- 建設業向け資金繰り改善のアドバイス(工事会計、原価管理、補助金活用)
- ファクタリングの代替案(例:公的制度融資、手形割引、ABLなど)
をご用意できます。ご希望があればお知らせください。