建設業における営業支援は、属人化と人手不足を解消し、安定した案件受注の仕組みを構築するための有効な手段です。本記事では、建設業特有の営業課題を整理したうえで、SFA・CRMの導入、営業代行、営業コンサルティング、BPOの4つの手段を比較し、自社に合う選び方とおすすめのツールを順番に解説します。
この記事の要約
- 建設業では人手不足と競争激化を背景に、ツールや外部サービスによる営業基盤の強化が求められている
- 担当者の勘や経験に依存する属人化を防ぎ、案件情報の共有で見落としを減らす効果がある
- 支援手法には、SFAなどのITツールの導入、外部の営業代行サービス、戦略から実行まで伴走する営業コンサルティング、事務作業を委託するBPOの4種類がある
- 自社のITスキルや解決したい課題、予算規模をもとに適切な手法とツールを選択する
建設業で営業支援が必要とされる理由

建設業を取り巻く市場環境の変化により、従来の営業スタイルを見直す企業が増加傾向にあります。業界全体が直面している構造的な背景を整理します。
| 環境の変化 | 営業活動への影響 |
|---|---|
| 慢性的な人手不足 | 現場業務に追われ営業活動に割く時間が確保できない |
| 競争環境の激化 | 待つだけの受注は難しく、積極的な新規開拓が求められる |
慢性的な人手不足が続いている
建設業界では若年層の入職者減少と高齢化により、慢性的な人手不足が続いています。建設業就業者数は1997年の685万人をピークに減少が続き、2025年はピーク時比69.8%の478万人となりました。年齢構成を見ても、2024年時点で55歳以上が36.7%(全産業32.4%)、29歳以下が11.7%(全産業16.9%)と、他産業より高齢化が進行しています。
限られた人員で現場を回す必要があり、営業活動に十分な時間を割けない企業は少なくありません。労働力不足を補いながら業務を効率化する手段として、外部サービスの活用やIT化が有力な選択肢となります。
参考:日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック 4. 建設労働」
参考:国土交通省「国土交通白書2025」第1節 担い手不足等によるサービスの供給制約
公共工事の減少と競争が激化した
建設投資は1992年度の約84兆円をピークに減少基調となり、2010年度にはピーク時の約半分まで縮小しました。その後は復興需要や民間設備投資の回復により増加傾向に転じたものの、2025年度の建設投資見通しは総額75兆5,700億円(政府投資25兆2,100億円、民間投資50兆3,600億円)と、民間投資が政府投資の約2倍を占める構造です。公共工事だけに頼れる市場環境ではなくなり、業界全体で民間案件を巡る競争が激化しています。
付き合いだけで仕事を受注できた時代は過去のものとなりつつあり、自ら積極的に民間案件を獲得する仕組みづくりが避けられません。顧客のニーズを素早く察知し、適切なタイミングで提案する営業基盤の整備が急務と言えます。
参考:日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック 1. 建設投資の動向」
【関連記事】建設業の民間工事とは?公共工事との違いと受注時のリスク管理を解説
建設業が抱える営業活動の課題
建設会社の営業部門は、他業界とは異なる特有の課題を抱えています。属人化やリソース不足によって生じる具体的な問題点を挙げます。
| 課題の要因 | 生じている具体的な問題点 |
|---|---|
| 情報の属人化 | 担当者の勘や経験に依存し、ノウハウが社内に共有されない |
| 兼務による負担 | 現場管理と営業の掛け持ちで新規開拓に手が回らない |
| 既存顧客への偏り | ルート営業に終始し、新たな受注基盤が育たない |
担当者の勘や経験に依存してしまう
属人化が進み、個人の勘や経験に頼った営業スタイルが定着していることは大きな課題です。担当者が案件の進捗や顧客の状況を抱え込んでしまうと、担当者不在時に対応が滞るリスクが生じます。また、優秀な営業マンのノウハウが社内に共有されず、組織全体の営業力が底上げされない原因にもつながるケースが珍しくありません。
現場と兼務で営業時間が不足する
中小規模の建設会社では、現場監督や技術者が営業を兼務しており、新規開拓にあてる時間が大幅に不足しがちです。日中の大半を現場の管理やトラブル対応に追われるため、どうしても営業活動は後回しになりがちです。本来注力すべき案件発掘がおろそかになり、結果として売上の伸び悩みを招く要因になり得ます。
既存顧客への対応に終始してしまう
限られた人員のなかでは、付き合いの長い既存顧客からの下請け案件やルート営業に終始してしまいます。安定した関係は重要であるものの、特定の元請企業に依存しすぎると、取引先の業績変動が自社の売上に直接影響しやすくなります。元請企業からの新規案件や新しい顧客を開拓する余裕を持てない状態は、経営の安定性を左右する課題といえます。
【関連記事】建設業の新規顧客開拓|手法一覧と自社に合う選び方を解説
建設業向け営業支援の4つの手段と比較

営業課題を解決する手段は、自社でツールを導入する方法、外部に業務を委託する方法、専門家の伴走支援を受ける方法など、大きく4つに分かれます。費用のかかり方、立ち上がりまでの期間、社内に残る資産が異なるため、それぞれの仕組みと適した状況を整理します。
| 支援の手法 | 特徴と適している状況 |
|---|---|
| ITツールの導入 | 自社にノウハウを蓄積し、長期的に組織の営業力を底上げする |
| 営業代行の活用 | リソース不足を補い、即戦力として短期間で成果を狙う |
| 営業コンサルティングの活用 | 戦略立案から実行までを専門家が伴走し、営業の仕組みそのものを構築する |
| BPOの活用 | 営業に付随する事務作業を委託し、提案活動の時間を確保する |
SFAなどのITツールを導入する
自社内にノウハウを蓄積し、中長期的な営業力の強化を図るならSFA(営業支援システム)の導入が適しています。顧客の基本情報から商談履歴、見積もりの進捗までを一元管理し、営業活動をデータとして可視化する手法です。初期設定や社内への定着には時間を要しますが、一度仕組みが根付けば、属人化を排除した強固な組織体制が手に入ります。
外部の営業代行サービスを活用する
社内に営業担当者がいない場合や、短期間で新規の案件を獲得したい場合は、営業代行サービスの活用が効果的です。ターゲットの選定からテレアポ、商談の設定までをプロに委託することで、自社のリソースを割かずに営業活動を展開できます。即戦力として機能する反面、社内にノウハウが残りにくい側面があるため、自社の営業組織をどう育てていくかという長期的な視点とセットでの検討が推奨されます。
営業コンサルティングで戦略から実行までの仕組みを構築する
ツールの導入や営業代行とあわせて検討したいのが、営業コンサルティングの活用です。自社の営業プロセス全体を第三者の視点で分析し、ターゲットの選定から商談の進め方、受注後のフォローまでを一貫した戦略として設計してもらえます。ツール導入だけでは解決しにくい「そもそも誰に何を提案すべきか」という上流の課題に踏み込める点が特徴です。支援内容や費用相場、契約前に確認すべき契約範囲は、営業コンサルの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】建設業の営業コンサル|費用相場と支援内容・契約範囲を解説
事務作業を外部委託するBPOを活用する
見積書の作成補助、提案資料の作成、顧客リストの整備といった営業に付随する事務作業を外部へ委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)も、営業時間を確保する手段の一つです。営業活動そのものは社内に残しつつ、時間を奪っている周辺業務だけを切り出せるため、現場と兼務で時間が足りない会社に向いています。委託範囲が広がるほど費用もかさむため、切り出す業務の優先順位を決めてから利用します。
自社に合う営業支援手法の選び方

自社の状況に合わない手法を選ぶと、費用ばかりがかさみ現場に定着しない事態に陥ります。導入にあたって確認すべき選定の基準を挙げます。
| 検討の観点 | 判断の基準 |
|---|---|
| ITスキル | 現場の従業員が抵抗なく操作できる難易度か |
| 課題の明確化 | 情報共有か新規開拓か、解決すべき優先事項を絞る |
| 予算と効果 | 初期費用と運用コストに見合う売上向上が見込めるか |
| 推進体制 | ツール選定や運用設計を自社だけで進められる体制があるか |
社員のITスキルに合わせて選ぶ
ツールを選定する際は、現場の従業員が抵抗なく操作できる難易度であるかを最優先に確認します。多機能で高度なシステムを導入しても、IT機器に不慣れな現場スタッフが入力の手間を嫌い、使われなくなっては意味がありません。スマートフォンから数回のタップで報告が完了するなど、直感的な操作性を備えたツールを選ぶことが定着の鍵を握ります。
解決したい課題を明確にして絞る
現状の営業活動において最もボトルネックとなっている課題を特定し、それを解決できる手法に絞り込みます。情報の属人化を解消したいならSFAの導入、新規のアポイント獲得数が足りないなら営業代行といった具合に、目的によって最適な選択肢は異なります。課題が曖昧なまま導入を進めると、不要な機能を持て余す結果になりかねません。
【関連記事】建設業の営業戦略の立て方|KPI設計まで4ステップで解説
予算と期待できる効果から判断する
初期費用や月額の運用コストを算出し、それに見合うだけの売上向上や工数削減の効果が見込めるかを冷静に判断します。高額なシステムや代行サービスを利用すれば必ず成果が出るわけではなく、自社の身の丈に合った投資規模を見極める姿勢が重要です。無料トライアルが用意されている場合は、操作感や機能の過不足を事前に確認し、費用対効果の見通しを立てたうえで本格導入を判断するアプローチが有効です。
自社だけで推進できる体制があるか見極める
ツールの選定や営業フローの再設計を社内だけで進められるかどうかも、手法を選ぶうえで見落とせない観点です。現場と営業を兼務している状態では、情報収集や比較検討に割ける時間が限られ、導入プロジェクト自体が頓挫するケースも珍しくありません。社内に営業戦略を専任で推進できる人材がいない場合は、戦略の設計段階から外部の営業コンサルティングを活用する方法が現実的です。ツールの選定支援や運用設計まで含めて伴走してもらえるため、現場への負担を抑えながら仕組みづくりを進められます。
建設業向けおすすめの営業支援ツール
建設業での導入実績が豊富で、現場でも使いやすい代表的なSFA(営業支援システム)や施工管理ツールを紹介します。
| ツール名 | 主な特徴・強み |
|---|---|
| kintone | 業務に合わせてアプリを柔軟に作成・カスタマイズできる |
| Mazrica Sales | 直感的な操作とAIによる案件の受注予測機能を備える |
| eセールスマネージャー | 入力のしやすさに定評があり、定着率が非常に高い |
【関連記事】建設業DXコンサルの支援内容と選び方|定着までの流れも解説
kintone
サイボウズ株式会社が提供するkintone(キントーン)は、自社の業務に合わせてシステムを柔軟に構築できるクラウドサービスです。プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップの直感的な操作で日報や案件管理のアプリを作成できます。建設業向けのテンプレートも豊富に用意されており、営業管理だけでなく施工管理や図面の共有など、社内のあらゆる情報を一元化する基盤として幅広く活用されています。
参考:サイボウズ株式会社「kintone(キントーン)」公式サイト
Mazrica Sales
株式会社マツリカが提供するMazrica Sales(旧Senses)は、現場の入力負荷を軽減し、直感的に案件の進捗を把握できるSFAです。カード形式の案件ボードを採用しており、商談の状況を視覚的に管理できる点が大きな特徴と言えます。AIが過去のデータに基づいて案件のリスクや受注確率を予測する機能を備え、経験の浅い担当者でも的確な営業アクションを起こせるよう強力に後押しします。
参考:株式会社マツリカ「Mazrica Sales」公式サイト
eセールスマネージャー
ソフトブレーン株式会社が提供するeセールスマネージャーは、現場の使いやすさを追求し、高い定着率を誇る国産の営業支援システムです。スマートフォンからの入力に最適化されており、移動中や現場からでも簡単に活動報告を完了できます。一度の入力で関連するすべての画面に情報が反映されるシングルインプットを採用し、営業担当者の事務負担を大幅に削減する設計が魅力です。
参考:ソフトブレーン株式会社「eセールスマネージャー」公式サイト
営業支援を導入する際の注意点
導入後のサポート体制まで確認する
ツールや外部サービスは、導入した時点がスタートです。初期設定の支援、操作研修、問い合わせ対応など、導入後のサポート体制がどこまで含まれるかを契約前に確認します。サポートが薄いまま現場に展開すると、質問が放置されて利用が止まり、費用だけが発生し続ける状態になりかねません。
小規模から始めて徐々に定着させる
最初から全社一斉に導入するのではなく、一部のチームや現場で小さく始めて、成功体験を積んでから広げる進め方が定着の近道です。試験運用のなかで入力項目や運用ルールを現場の実態に合わせて調整し、「使うと楽になる」という実感を作ってから全社展開することで、形だけの導入に終わるリスクを減らせます。
建設業の営業支援コンサルティングなら「建設の参謀」
ツールの導入や営業代行だけでは、「自社の強みをどう伝えるか」という上流の課題は解決しにくいケースがあります。エスエスコンサルティング株式会社が運営する「建設の参謀」は、建設業および製造業に特化した経営参謀サービスです。単なる元請け紹介ではなく、「何で勝つか」を先に固めたうえで、営業戦略の設計から元請企業の新規開拓の実行、財務改善までを一貫して伴走します。
まずは「何で勝つか」を固める
建設の参謀では、支援開始後、まずは経営の土台づくりに充てます。代表者へのインタビューや決算書・組織図の確認から着手し、幹部や現場責任者へのヒアリングを通じて、社長の方針と現場の認識のズレを丁寧にすり合わせます。
この工程を経て、1年間の元請企業の開拓方針の策定、営業資料の整備、商談ロールプレイの実施などを完了させ、紹介が成果につながる状態を先に作る点が大きな特徴です。強みが言葉になっていなければ、発注側には「どこも同じ」に見えてしまいます。プログラムを通じて自社の勝ち筋を明確にすることで、価格だけで比較される状態からの脱却を目指します。
戦略に基づいた元請企業の新規開拓を実行する
土台づくりを終えた後は、策定した戦略に沿って元請け候補への紹介と開拓を伴走します。紹介数よりも質を重視した接触設計を行い、会社案内や提案資料が整った状態で元請けとの商談に臨めるよう準備します。
訪問後のフォローまでサポートに含まれており、訪問結果のヒアリングから次の訪問戦略・頻度の設計までを一緒に進める伴走体制です。準備が整った会社は、「安い下請け」ではなく「頼みたい相手」として選ばれやすくなります。
会社に残る営業資産を整備することも可能
建設の参謀の支援を通じて、事業パンフレット、トークスクリプト、営業テンプレート一式、ターゲットリストといった営業資産が自社に蓄積されます。外部に任せきりの営業代行とは異なり、支援期間中に作り上げた仕組みや資料は支援終了後も会社の財産として活用し続けられます。
営業戦略の設計から元請企業の新規開拓、さらには財務改善や資金繰りの見直しまで含めて経営全体を相談できる点も、建設の参謀ならではの強みです。「まず自社の強みを言葉にするところから始めたい」という段階からでも相談を受け付けています。
まとめ
建設業の営業支援は、属人化を防ぎ案件情報を可視化することで、安定した受注基盤を構築する重要な取り組みです。自社の課題に合わせてITツールや営業代行、営業コンサルティング、BPOのなかから適切な手法を選定し、現場の従業員が抵抗なく使いこなせる仕組みを構築していく姿勢が求められます。
とくに現場管理と営業を兼務している状況では、ツールの選定や営業フローの再設計に割く時間を確保しにくく、仕組みづくりの第一歩でつまずくケースが少なくありません。社内だけで推進する体制が整っていない場合は、戦略設計から実行までを伴走してくれる営業コンサルティングの活用が有効な手段となります。
エスエスコンサルティングでは、建設業界の商習慣と受注構造を熟知したコンサルタントが、営業戦略の立案から元請企業の新規開拓の実行、組織への定着までを一貫して支援しています。戦略から実行までの伴走支援により、現場の負担を抑えながら売上の安定化と持続的な成長をサポートします。

