建設業で安定した利益を確保するには、場当たり的な営業から脱却し、ターゲットの設定から目標・KPIの設計、営業計画への落とし込みまでを一体で設計することが求められます。本記事では、営業戦略を構成する4つの要素と、従来の手法では伸び悩む理由、計画づくりの4つのステップ、属人化を防ぐ運用の仕組みまでを通して解説します。
この記事の要約
- 営業戦略は、ターゲット・提供価値・目標とKPI・営業計画の4つの要素で設計する
- ステップ1では、ターゲットを絞り込み、自社の技術力や実績などの提供価値を整理する
- ステップ2・3では、売上目標から必要な行動量を逆算し、年間・月次の計画に落とし込む
- CRMツールの導入や営業資料の共有により、組織全体で営業力を底上げする
- 自社にノウハウがない場合は、外部の専門家やコンサルタントを活用する
建設業の営業戦略とは|設計する4つの要素
建設業における営業戦略とは、「誰に、何を、どのような目標で、どう届けるか」を設計することです。具体的には、ターゲット(誰に)、提供価値(何を)、目標とKPI(どこまで)、営業計画(どう動くか)の4つの要素で構成されます。
個別の手法(DMや展示会、ホームページ、Googleマップの活用など)は、この4つの要素が決まってはじめて選べるものです。手法の詳細は、新規顧客開拓の手法を整理した記事で解説します。
【関連記事】建設業の新規顧客開拓|手法一覧と自社に合う選び方を解説
従来の営業手法では伸び悩む理由

既存の商慣習に依存した営業体制は、外部環境の変化に弱く業績低迷の要因となります。主な3つの課題を整理します。
| 課題の分類 | 業績低迷につながる理由 |
|---|---|
| 待ちの姿勢 | 既存顧客からの紹介や引き合いに依存し、新規案件を獲得できない |
| 属人化 | 担当者の経験やスキルに依存し、退職時に顧客やノウハウを失う |
| 下請け依存 | 価格交渉力が弱く、利益率の低い案件を受注せざるを得ない |
待ちの営業で新規開拓が進まない
既存の元請けからの紹介や引き合いを待つだけの営業では、新規案件の獲得件数は頭打ちになります。国土交通省「令和7年度(2025年度)建設投資見通し」によると建設投資額は前年度比3.2%増の75兆5,700億円と市場全体は拡大していますが、資材費・労務費の上昇や同業他社との競争激化により、待っているだけで利益の出る条件の仕事が舞い込む状況は少なくなっています。自ら顧客にアプローチする動きがなければ、売上の維持すら困難になっていく傾向があります。過去のつながりだけに依存せず、新たなチャネルを自ら開拓する姿勢が重要です。
参考:日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック 1. 建設投資の動向」
属人化によりノウハウが残らない
個人のスキルや人脈に頼った営業活動は、組織としての成長を阻害するリスクを抱えています。建設業では専門知識や長年の信頼関係が求められるため、一部の担当者に業務が集中しやすい構造があります。優秀な担当者が退職した際、顧客まで離れてしまうケースは珍しくありません。一方、チームで情報を共有する仕組みがあれば、担当者変更時のリスクを最小限に抑えられます。まずは属人化を解消する第一歩として、顧客リストや過去の提案履歴を社内の誰もが確認できる状態に整える作業から始める形が推奨されます。
下請け依存により価格競争に陥る
特定の元請け企業に依存する下請け体質では、価格交渉の余地を持ちにくく、利益率が低下しやすい傾向があります。発注元から示される価格水準に応じざるを得ず、資材高騰や人件費上昇の影響を受けても価格転嫁が難しいため、受注しても手元に利益が残りにくい状況に陥ります。指名で発注を受けられるほどの独自技術を持つ一部の企業を除けば、下請けのままで適正な利益を確保し続けるのは困難です。価格競争から抜け出すためにも、元請企業の新規開拓や施主・法人からの直接受注により、自社で受注をコントロールできる割合を高めていくことが求められます。
【関連記事】建設業の元請け開拓とは?2つの意味の違いと選び方を解説
ステップ1|ターゲットと提供価値を決める
やみくもにアプローチを始める前に、自社の立ち位置と狙うべき市場を明確にする土台作りが求められます。
| 準備項目 | 具体的な作業内容 |
|---|---|
| ターゲット設定 | 利益率が高くリピートが見込める顧客層を過去のデータから絞り込む |
| 強みの整理 | 他社にはない技術力、対応スピード、得意な施工領域を言語化する |
ターゲット顧客を明確に絞り込む
過去の実績データを分析し、最も利益率が高くリピート率の良い顧客層をターゲットとして設定します。取引先の属性は、ゼネコンや不動産管理会社、地域の工務店、個人オーナーなど多岐にわたるのが実情です。ターゲットを選定する際は「地域密着でリフォームを展開する工務店」や「特定の生産設備を持つ工場」のように、具体的な属性まで落とし込むことが重要です。絞り込みを行うことで相手の課題に合わせた精度の高い提案が可能となり、無駄な営業コストの削減にも寄与します。
自社の強みと提供価値を整理する
競合他社と比較した際の自社の優位性を言語化し、顧客に提供できる具体的な価値を明確にします。工期の短縮能力や特殊な資格を持つ職人の在籍数、過去の無事故記録など、客観的な事実に基づいた強みを洗い出す作業が必要です。単に技術力が高いといった抽象的なアピールでは、慎重に業者を選ぶ顧客からの信頼は得にくい傾向があります。「自社に依頼することで顧客のビジネスにどのようなメリットがあるか」を整理し、営業資料やWebサイトのコンテンツとして一貫して発信していくことが重要です。
ステップ2|目標とKPIを設計する

ターゲットと提供価値が決まったら、売上目標を日々の行動レベルの数値に落とし込みます。
売上目標から必要な行動量を逆算する
年間の売上目標を起点に、平均的な受注単価と成約率から、必要な受注件数、見積もり提出件数、商談件数、新規の打診数を逆算します。例えば「新規で年間6,000万円を受注する」という目標であれば、1件当たりの平均受注額と過去の成約率をもとに、月に何件の商談が必要かまで分解できます。行動量が数値になっていれば、日々の営業活動が目標に対して足りているかを判断できます。
KPIは行動量と質の両面で設定する
KPI(重要業績評価指標)は、打診数や商談件数といった行動量だけでなく、成約率や平均受注単価、粗利率といった質の指標もあわせて設定します。行動量だけを追うと、採算の合わない案件まで追いかけてしまいがちです。「新規元請けからの受注額」「見積もり提出からの成約率」など、利益につながる指標をセットで管理することが、無理のない受注拡大につながります。
【関連記事】建設業の売上アップ|4つの変数に分けて伸ばす方法を解説
ステップ3|年間・月次の営業計画に落とす
目標とKPIが決まったら、施策の実行時期と確認のサイクルを計画に落とし込みます。
年間計画で施策の実行時期を決める
展示会への参加時期、DMを送る時期、ホームページの改修時期など、施策ごとの実行タイミングを年間カレンダーに配置します。建設業には繁忙期と閑散期があるため、現場が落ち着く時期に営業活動を厚くするなど、現場の稼働と両立できる計画にすることが継続の鍵になります。
月次で進捗を確認し計画を修正する
月に1回、KPIの実績と計画の差を確認し、翌月の行動を修正します。商談数が足りないのか、成約率が低いのかによって、打つべき手は変わります。計画は作って終わりではなく、確認と修正を繰り返す運用までを含めて営業戦略と捉えることが重要です。
ステップ4|属人化を防ぐ運用の仕組みをつくる

個人の力量に依存する状態から、組織全体で成果を出し続ける仕組みへと移行する手法を整備します。
| 仕組み化の手法 | 解決できる課題 |
|---|---|
| CRMツールの導入 | 顧客情報や商談進捗のブラックボックス化を解消する |
| 営業資料の統一 | 担当者ごとの提案品質のばらつきをなくす |
| 外部コンサル活用 | 自社に不足しているノウハウや客観的な視点を補う |
CRMツールで進捗を可視化する
顧客関係管理(CRM)ツールを導入し、商談履歴や案件の進捗状況をチーム全体でリアルタイムに共有します。過去の提案内容や失注理由がデータとして蓄積されるため、担当者の不在時や業務の引き継ぎ時にも対応が滞りません。上司が適切なタイミングでフォローに入りやすくなるなど、組織全体の営業力を底上げする要素です。ツール導入の注意点として、入力項目が多すぎると現場の負担となり定着しないリスクがあるため、運用開始時は必要最小限の項目に絞ることが重要です。
【関連記事】建設業の営業支援4つの手段を比較|費用と選び方を解説
営業資料を統一し社内で共有する
会社案内や提案書、見積もりのテンプレートを標準化し、誰でも一定水準以上の提案ができる環境を整えます。優秀な営業担当者のノウハウを抽出してフォーマット化すれば、経験の浅い社員でも説得力のあるプレゼンテーションを実現できます。口頭での説明に頼る属人的なスタイルと比較して、統一された視覚資料を用いることは、顧客に企業としての安心感を与える有効な材料です。常に最新の施工事例が反映されるよう、資料を定期的に更新するルールも設定します。
外部のコンサルタントを活用する
社内に仕組み化のノウハウがない場合は、営業体制の構築を伴走できるコンサルティング会社の支援を受ける方法も有効です。具体的には、CRMをはじめとするセールスDXツールの選定・導入支援や、KPIの設計、進捗管理ルールの策定など、属人化を解消するための仕組みづくりを外部の知見で加速できます。
社内の営業リソースが限られている場合には、仕組みが定着するまでの期間に限定して営業代行を併用し、体制移行のスピードを維持する選択肢もあります。単発のアドバイスで完結するのではなく、構築した仕組みを社内に定着させながら段階的に自走体制へ移行していく伴走型の支援形態を選ぶことが、属人化からの脱却を着実に進めるうえで重要です。
【関連記事】建設業の営業コンサル|費用相場と支援内容・契約範囲を解説
営業戦略の設計なら「建設の参謀」
ここまで紹介してきたターゲット設定や目標・KPIの設計、営業計画への落とし込みを自社だけで並行して進めるのは、日々の現場対応に追われる経営者にとって容易ではありません。現場を回す力と、会社を伸ばす設計図は別物です。
エスエスコンサルティング株式会社が提供する建設業向け経営参謀サービス「建設の参謀」は、単なる元請け紹介ではなく、経営の土台づくりから元請企業の新規開拓の実行支援までを一貫して伴走するサービスです。
最初は、代表者や幹部へのヒアリング、決算書の確認、強みの言語化、営業資料の整備、ターゲットリストの作成までを行い、「何で勝つ会社か」を明確にしたうえで開拓活動に進む二段構えの設計となっています。紹介を急ぐのではなく、紹介が成果につながる状態を先に作る点が特徴です。
支援の範囲は営業面にとどまらず、財務改善や資金繰りの見直し、銀行対応の強化まで経営全体をカバーしています。支援を通じて事業パンフレットやトークスクリプト、ターゲットリストといった営業資産が会社に残るため、支援終了後も自走できる体制を構築できます。
強みを言葉にできないと、発注側には「どこも同じ」に見えやすくなります。技術力はあるのに利益が残らない、その状態を変えていきたいと考えている経営者の方は、まずは自社の強みの整理から相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
建設業の営業戦略は、ターゲットと提供価値を定め、目標とKPIを設計し、年間・月次の計画に落とし込む一連の設計作業です。自社の強みを明確に定義したうえで、計画に沿って手法を選択し、属人化を防ぐ仕組みを構築していくプロセスが中長期的な利益を左右します。
一方で、日々の現場対応や施工管理に追われる経営者や営業責任者が、利益構造の分析からターゲットの再設計、KPIの設計、CRMの導入運用までを自社リソースだけで並行して進めるのは容易ではありません。本記事で紹介した取り組みの中でも、戦略設計と営業プロセスの仕組み化は、外部の専門家と連携することで実行スピードが大きく変わる領域です。
エスエスコンサルティング株式会社では、営業戦略の立案から元請企業の新規開拓の実行支援、財務改善や資金繰りの見直しまで、戦略と実務を一貫して支援する体制を整えています。各社の事業構造や地域特性を踏まえた伴走型の支援により、現場の負担を抑えながら受注拡大と利益改善の仕組みを構築できます。

