建設業が公共工事を受注するには?参入の手順と採算の見極め方を解説

建設業が公共工事を受注するには?​

公共工事を自社が元請けとして受注するには、建設業許可の取得、経営事項審査の受審、入札参加資格の申請という3つの段階を踏みます。経営事項審査の点数で参加できる工事の規模が決まるため、決算内容がそのまま受注可能な範囲に反映される仕組みです。一方で、下請けとして公共工事に関わる道であれば、経営事項審査を受けずに実績を積み始められます。

この記事の要約

  • 元請けとして受注するには許可、経審、入札参加資格の3段階が要る
  • 経審の総合評定値で参加できる工事のランクが決まる
  • 経審の有効期間は審査基準日から1年7か月で切れる
  • 価格競争と書類負担が採算を左右するため参入前に確認する
  • 下請けであれば経審なしで公共工事の実績を積み始められる

公共工事とはどのような工事か

公共工事とはどのような工事か

公共工事は、国や地方公共団体などが発注する建設工事を指します。民間工事と比べて、発注者の性質、財源、手続きの進め方が異なります。

特徴内容
発注者国、地方公共団体、独立行政法人など
財源税金を原資として支払われる
選定方法原則として競争入札で施工者を決める
手続き検査と提出書類の基準が定められている

【関連記事】建設業の民間工事とは?公共工事との違いと受注時のリスク管理を解説

発注者は国や自治体になる

公共工事の発注者は、国の機関、都道府県、市区町村、およびこれらに準じる団体です。民間の企業や個人が発注者となる工事とは、契約の相手が変わります。

発注者が公的な機関であるため、代金の支払いが滞る懸念は小さくなります。受注先の信用リスクという観点では、民間工事より安定した取引になります。一方で、契約の内容や手続きは定められた様式に沿って進むため、柔軟な調整の余地は限られます。

税金を財源に支払われる

公共工事の代金は税金を原資としています。そのため、発注の過程と価格の決定について、公正さと透明性が求められます。

特定の会社を恣意的に選ぶことができない仕組みになっており、原則として競争入札で施工者を決めます。人脈や紹介による受注ではなく、制度に沿った手続きを踏んだ会社だけが土俵に立てるという性質があります。逆に言えば、手続きさえ整えれば、これまで取引のなかった発注者の工事にも参加できます。

参考:建設業許可制度に関するQ&A(施工体制の確保)|国土交通省 中国地方整備局

工種は土木から設備まで広い

公共工事は土木工事だけではありません。道路や橋梁といった土木の分野に加え、公共施設の建築、電気設備、機械設備、管工事、塗装、防水など、幅広い工種が発注されています。

自社の工種が土木以外であっても、参入の対象になり得ます。学校や庁舎の改修工事、公営住宅の修繕、公共施設の設備更新といった案件は、専門工事会社が元請けとして受注できる規模のものが含まれます。自社の工種で発注実績があるかは、各発注機関の入札結果の公表資料で確かめられます。

検査と提出書類の基準がそろう

公共工事では、施工中の管理と完成時の検査の基準が定められています。写真の撮り方、出来形の計測、品質管理の記録といった項目が、発注機関ごとの仕様書で指定されます。

民間工事では現場ごとに運用が異なる部分も、公共工事では基準が明示されています。慣れるまでは手間がかかりますが、一度体制を作れば以降の工事に転用できます。書類の基準がそろっていることは、参入時の負担であると同時に、社内の管理水準を引き上げる機会にもなります。

受注までの3つの段階

受注までの3つの段階

自社が元請けとして公共工事を受注するには、3つの段階を順に進みます。それぞれに時間がかかるため、逆算して着手の時期を決めます。

段階内容
1. 建設業許可受注する工種の許可を取得する
2. 経営事項審査経営規模と経営状況の審査を受ける
3. 入札参加資格参加したい発注機関ごとに申請する

建設業許可を取得する

最初の要件は、受注する工種の建設業許可を持っていることです。公共工事の元請けとなる場合、許可がなければ入札に参加できません。

すでに許可を持っている会社であれば、この段階は済んでいます。確認すべきは、許可の業種が参入したい工事の内容と一致しているか、有効期限が切れていないか、想定する工事の規模に照らして許可の区分が足りているかの3点です。一定規模以上の工事を下請けに出す場合には特定建設業の許可が必要になるため、許可の区分もあわせて確かめます。

参考:建設業許可制度に関するQ&A(施工体制の確保)|国土交通省 中国地方整備局

経営事項審査を受審する

国や地方公共団体などが発注する1件500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を直接請け負う建設業者は、経営事項審査を受ける必要があります。会社の経営規模、経営状況、技術力、社会性などを点数化する審査です。

流れは、決算後に経営状況分析機関へ分析を申請し、その結果をもとに許可行政庁へ経営規模等評価の申請と総合評定値の請求を行う形になります。書類の準備から結果通知の受領までには数か月かかるため、決算が確定したら早めに着手します。

参考:1.経営事項審査制度の概要について | 建設産業 | 国土交通省 関東地方整備局

入札参加資格を申請する

経営事項審査の結果を得たら、参加したい発注機関ごとに入札参加資格の申請を行います。国、都道府県、市区町村はそれぞれ別に申請が必要で、受付の時期も機関ごとに決まっています。

多くの機関では定期受付が数年に一度で、その間は随時受付という運用になっています。狙いたい発注機関の受付時期を調べ、経営事項審査の結果が間に合うように逆算します。自社の営業エリア内にある市区町村から始めると、移動の負担が小さく管理もしやすくなります。

経審の点数は何を左右するか

経営事項審査の点数は、参加できる工事の規模を決めます。決算の内容が点数に反映されるため、財務の状態がそのまま受注可能な範囲につながります。

点数が影響する範囲内容
参加できる工事規模総合評定値によるランク分けで決まる
有効期間審査基準日から1年7か月
主な評価項目完成工事高
自己資本の額
利益の状況
技術職員の数
社会保険の加入状況

総合評定値でランクが決まる

経営事項審査の結果は、総合評定値という1つの点数にまとめられます。多くの発注機関は、この点数をもとに業者をランク分けし、ランクごとに参加できる工事の金額帯を定めています。

自社の点数が分かれば、どの規模の工事に参加できるかが見えます。参入を検討する段階で、狙いたい工事の金額帯とそれに必要なランク、そのランクに求められる点数を調べておくと、目標が具体的になります。点数が足りなければ、何を改善すれば届くのかという議論に進めます。

有効期間は1年7か月で切れる

経営事項審査の結果には有効期間があり、審査基準日から1年7か月とされています。審査基準日は原則として申請日の直前の営業年度の終了の日、つまり直前の決算日です。

結果通知を受け取った日からではなく決算日から起算される点に注意が要ります。毎年公共工事を直接請け負うのであれば、有効期間が切れ目なく続くよう、決算後は速やかに受審する必要があります。1度でも空白ができると、その間は1件500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の公共工事を元請けとして請け負えません。

参考:1.経営事項審査制度の概要について | 建設産業 | 国土交通省 関東地方整備局

自己資本と技術者数が響く

点数を構成する要素には、完成工事高、自己資本の額、利益の状況、技術職員の数、社会保険の加入状況などが含まれます。このうち自己資本と技術者数は、短期間では動かしにくい項目です。

自己資本は利益の積み上げで増えるため、毎期の採算が数年後の点数に表れます。技術者数は資格を持つ職員の数で決まるため、社員の資格取得を計画的に進めることが点数に直結します。どちらも今期の取り組みが翌年以降に効く項目であり、参入を決めた時点から手をつける意味があります。

決算内容の改善が翌年に効く

経営事項審査は決算の数字をもとに評価されるため、決算内容の改善はそのまま点数に反映されます。粗利率を上げて利益を残し、自己資本を厚くすることが、受注できる工事の規模を広げる道筋になります。

この構造は、金融機関が会社を評価する見方とも重なります。財務体質を整える取り組みは、経営事項審査の点数と融資の条件の両方に効いてきます。公共工事への参入を検討する場面は、財務そのものを見直す機会にもなります。

【関連記事】建設業の銀行交渉はどう進める?銀行が見る指標と準備を解説

入札の方式と落札の決まり方

入札の方式と落札の決まり方

入札にはいくつかの方式があり、参加の仕方も評価の基準も変わります。自社が参加できるのはどの方式かを把握しておきます。

方式特徴
一般競争入札条件を満たせば誰でも参加できる
指名競争入札発注者が選んだ業者だけが参加する
総合評価方式価格に加えて技術的な評価点も見る

一般競争と指名競争に分かれる

一般競争入札は、公告された参加条件を満たす業者であれば参加できる方式です。条件には、入札参加資格のランク、施工実績、営業所の所在地などが設定されます。

指名競争入札は、発注者が名簿の中から業者を選び、指名された業者だけが入札に参加します。新規に参入した会社がすぐに指名されるとは限らないため、まずは一般競争入札で実績を積む形が現実的です。自治体によって方式の運用は異なるため、狙う発注機関の公告を継続して確認します。

総合評価方式は技術点も見る

総合評価方式では、入札価格だけでなく、施工計画、技術者の資格と経験、過去の工事成績といった技術的な項目も評価されます。価格と技術点を組み合わせて落札者が決まる仕組みです。価格だけの競争になりにくいため、施工力に自信のある会社にとっては有利に働く場面があります。ただし、評価される項目は発注機関ごとに定められており、提出する資料の量も増えます。参加する前に、評価の配点と必要書類を確認しておきます。

調査基準価格の水準を確かめる

発注者は、工事ごとに予定価格を設定し、あわせて調査基準価格や最低制限価格を設ける場合があります。著しく低い価格での入札があったときに、適正な施工が確保できるかを確認するための仕組みです。

この水準を下回る価格で入札すると、調査の対象になったり、そもそも落札できなかったりします。無理に価格を下げても受注につながらないため、公告の内容で価格の扱いがどう定められているかを確認します。採算を割る価格で応札することは、参入の目的そのものと矛盾します。

参考:地方公共団体の入札・契約制度の概要(総務省)

参入前に確認したい採算と負担

公共工事は安定した発注先になり得る一方、民間工事とは異なる負担も伴います。参入の可否は、この負担を自社が吸収できるかで判断します。

確認する点内容
価格競争入札の性質上、粗利益が薄くなりやすい
書類の負担施工中と完成時の書類作成に工数がかかる
入金の時期検査の完了時期が代金の受領時期を左右する
前払金着工時の立替を軽くできる制度がある

価格競争で粗利益が薄くなる

競争入札は価格で競う仕組みであるため、落札するには他社より低い価格を提示する必要があります。結果として、民間工事より粗利益が薄くなる傾向があります。

参入を検討する段階で、自社の粗利率の下限を決めておきます。その水準を割る価格でしか落札できない規模の工事であれば、参入しても利益は残りません。工種や地域によって競争の激しさは違うため、狙う発注機関の過去の落札結果を調べ、落札価格と予定価格の関係を確認します。

書類作成の負担が現場に重なる

公共工事では、施工計画書、施工体制台帳、工事写真、出来形管理の記録、品質管理の記録など、提出する書類の種類が多くなります。これらの作成は現場の担当者が担うことが多く、施工と並行して進める負担が発生します。

書類の様式を理解し、写真の撮り方を現場に周知するところから始まるため、初回は特に時間がかかります。誰がこの業務を担当するかを決めないまま受注すると、現場監督が施工管理と書類作成の両方を抱えることになります。1件目は自社の体制で確実にこなせる規模を選びます。

検査の遅れが入金時期を動かす

公共工事の代金は、前払金などの制度を利用する場合を除き、完成検査に合格した後に支払われます。検査で指摘があれば手直しが必要になり、その分だけ入金の時期が後ろにずれます。

書類の不備でも検査は止まります。施工そのものに問題がなくても、記録が基準を満たしていなければ合格になりません。資金繰りの計画を立てる際は、検査に想定より時間がかかる可能性を織り込んでおきます。

【関連記事】建設業の資金繰りはなぜ苦しい?資金繰り表と取引条件で立て直す方法を解説

前払金で着工時の立替が減る

公共工事では、前払金の制度が用意されています。公共工事の前払金保証事業に関する法律にもとづき、保証事業会社の保証を受けることで、着工の段階で請負代金の一部を受け取れる仕組みです。

着工時の材料費や外注費をこの資金でまかなえれば、民間工事に比べて立替の負担は軽くなります。制度の適用条件や請求の手続きは発注機関ごとに定められているため、契約書の条項で確認します。資金繰りの面では、公共工事は民間工事より扱いやすい側面を持っています。

参考:前払金保証事業|国土交通省

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下請けとして公共工事に関わる

元請けとして参入する道とは別に、公共工事を受注している元請企業の協力会社として関わる道があります。着手までの時間が短く、実績を積む段階として機能します。

下請けルートの特徴内容
必要な手続き経営事項審査と入札参加資格は不要
得られるもの公共工事の書類基準と施工の経験
次の段階実績をもとに元請け参入を検討できる

経審なしで実績を積める

公共工事を下請けとして施工する場合、公共工事を直接請け負う場合の要件である経営事項審査や入札参加資格は必要ありません。

つまり、いま持っている建設業許可のまま、公共工事の現場に入れます。書類の基準や検査の進め方を実際の現場で学べるため、将来的に元請けとして参入する際の準備にもなります。決算後の手続きを待たずに動ける点で、着手のハードルは低くなります。

参考:建設業法 | e-Gov 法令検索(第二十七条の二十三)

公共工事を持つ元請企業を探す

下請けとして関わるには、公共工事を受注している元請企業と取引を作ります。発注機関が公表している入札結果や工事の発注情報から、自社の営業エリアで公共工事を落札している企業を調べられます。

接点を作る際は、自社の対応工種、施工可能な規模、対応エリア、そして公共工事の書類に対応できる体制があるかを示します。元請企業にとっては、書類の基準を理解している協力会社は貴重な存在です。民間工事だけを受けてきた会社であっても、対応する意思と体制を示せば候補に入ります。

【関連記事】建設業の元請け紹介とは?紹介を受ける5つの経路と事前の準備を解説

まとめ

公共工事を自社が元請けとして受注するには、建設業許可、経営事項審査、入札参加資格の3段階を踏み、経営事項審査の総合評定値で参加できる工事の規模が決まります。有効期間は審査基準日から1年7か月であり、毎年公共工事を請け負うなら決算後の受審を切らさない運用が必要です。参入の可否は、価格競争による粗利益の薄さ、書類作成の負担、検査の時期が入金に及ぼす影響を自社が吸収できるかで判断します。経営事項審査を待たずに動くなら、公共工事を受注している元請企業の協力会社として実績を積む道もあります。

ただ、経営事項審査の点数は決算の内容に左右されるため、参入を決めてから慌てて手を打っても翌年以降にしか効きません。自己資本を厚くするには毎期の採算を上げる必要がありますし、その取り組みは金融機関からの評価とも重なります。どちらから着手すべきかの判断には、自社の数字を経営指標として読み直す作業が要ります。

建設の参謀では、銀行格付けや財務指標の改善に対応しています。決算の内容が経営事項審査の点数と金融機関の評価にどう反映されるかを整理したうえで、自己資本を厚くするための粗利率の改善を一緒に進めます。あわせて、公共工事を受注している元請企業との接点づくりについても、候補の紹介と開拓の戦略設計から関わります。対応範囲は個別に相談のうえ決定します。自社の体制で公共工事への参入が現実的かを確認したい場合は、以下よりご相談いただけます。

▶お問い合わせ | エスエスコンサルティング

エスエスコンサルティング株式会社 代表取締役社長

アンダーセンコンサルティング(現 アクセンチュア)出身。

累計30年以上に渡り、建設業・製造業の経営改善コンサルティングに従事。

1,400社以上の建設事業者の成長を支援してきた。

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