鉄筋工事を請負金額500万円以上で請け負うなら、鉄筋工事業の建設業許可が要ります。許可の可否を分けるのは施工力ではなく、経営経験のある役員、営業所ごとの営業所技術者、500万円以上の自己資本をはじめとする要件を証明できるかどうかです。この記事では、許可が必要になる金額の基準から5つの要件、営業所技術者になれる資格と実務経験の条件、一般と特定の選び方までを、自社の人員と決算書に当てはめて判断できる形で整理しました。許可を取ったあとに元請企業の新規開拓をどう進めるかもあわせて扱います。
この記事の要約
- 鉄筋工事は請負金額500万円以上になると鉄筋工事業の許可が必要
- 加工済み鉄骨を現場で組み立てる工事は鉄筋工事ではなく別業種
- 許可要件は経営経験、営業所技術者、財産的基礎、誠実性、欠格要件の5つ
- 営業所技術者は資格、指定学科卒+実務、実務10年のいずれかで満たせる
- 下請契約が5,000万円以上になる元請け工事では特定建設業許可が必要
目次
鉄筋工事に建設業許可は必要か

鉄筋工事そのものに許可が常に要るわけではなく、請負金額が基準を超えたときに許可が必要になります。もうひとつ押さえたいのが業種の線引きで、現場では「鉄筋」と呼んでいても、建設業法上は別の業種に整理される工事があります。自社の受注が鉄筋工事業に当たるかどうかを先に確かめておくと、申請の業種選びで迷いません。
| 判断する場面 | 押さえる結論 |
|---|---|
| 1件の請負金額が500万円未満 | 軽微な工事に当たり、許可がなくても請け負える |
| 1件の請負金額が500万円以上 | 鉄筋工事業の許可が必要になる |
| 鉄筋の配筋・組立て・継手 | 鉄筋工事に該当する |
| 加工済み鉄骨の現場組立てのみ | とび・土工・コンクリート工事に区分される |
請負金額500万円以上で許可が要る
建設業の許可は、軽微な建設工事だけを請け負う場合には求められません。鉄筋工事のような専門工事では、1件の請負代金が500万円(税込)未満であれば軽微な工事に当たり、無許可でも施工できます。この金額を超える工事を請け負うときに、業種ごとの許可が必要になるという整理です。注意したいのは、同じ工事を意図的に分割して契約しても、正当な理由がなければ合計額で判断される点にあります。元請けから金額の大きい直接発注を打診された段階で許可がなければ、話がそこで止まってしまいます。
鉄筋加工組立てと鉄筋継手が対象
鉄筋工事は「棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事」と定められています。具体的な例示は鉄筋加工組立て工事と鉄筋継手工事の2つで、前者は鉄筋の配筋と組立て、後者は配筋された鉄筋を接合する工事を指します。継手にはガス圧接継手、溶接継手、機械式継手などが含まれ、圧接だけを専門に請けている会社も鉄筋工事業の範囲に入ります。自社の工事経歴書に並ぶ工事名が、この内容と例示に沿っているかを確認しておくと、実務経験の証明でもつまずきにくくなります。
参考:国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」
鉄骨の組立ては別業種に分かれる
鉄骨に関わる工事は、請け負う範囲によって鉄筋工事とは別の業種に分かれます。鉄骨の製作、加工から組立てまでを一貫して請け負う工事は鋼構造物工事、すでに加工された鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負う工事はとび・土工・コンクリート工事に区分されます。鉄筋工事業の許可を取っても、これらの工事を500万円以上で請け負うことはできません。鉄筋と鉄骨の両方を手がけている会社なら、どちらの売上が伸びているかを踏まえ、必要な業種をあわせて検討する流れになります。
参考:国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方」
鉄筋工事業の許可で満たす5要件
許可の審査で見られるのは、経営、技術、財産、人物の4側面です。具体的には、経営業務の管理責任者等の経験、営業所ごとの営業所技術者、財産的基礎、誠実性、欠格要件に当たらないことという5つを同時に満たす必要があります。多くの会社でつまずくのは経営経験と営業所技術者の2つで、どちらも過去の資料をどれだけ残せているかが鍵になります。
| 要件 | 自社で確認する点 |
|---|---|
| 経営業務の管理責任者等 | 常勤役員に建設業の経営経験が5年以上あるか |
| 営業所技術者 | 営業所ごとに資格者か実務経験者を常勤で置けるか |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、または同額の資金調達能力があるか |
| 誠実性 | 役員等に不正・不誠実な行為による処分歴がないか |
| 欠格要件 | 役員等が法に定める欠格事由に当たらないか |
常勤役員等の経営経験を証明する
経営面の要件は、常勤の役員のうち1人が建設業の経営経験を一定年数もつことで満たせます。原則は建設業に関する5年以上の経営経験で、個人事業主としての期間も対象に含められます。補佐経験や、常勤役員と補佐者を組み合わせる形で認められる取り扱いもあるため、社内に該当者がいるかは幅をもって確認するほうが現実的です。証明では、登記事項証明書に加えて、当時の工事請負契約書や注文書といった過去の資料が求められます。書類がそろわず要件を満たせないケースが少なくないので、先に保管状況を点検しておくと安全です。
営業所に営業所技術者を置く
営業所技術者は、営業所ごとに常勤で1人を置く必要があります。従来「専任技術者」と呼ばれていた役割です。ここで求められる常勤は、その営業所に常時勤務して職務にあたる状態を指し、他社との兼務や、遠隔地の現場に常駐している状態では認められません。社長が営業所技術者を兼ねる形も実務上は多く、要件を満たす資格や経験があるなら現実的な選択肢になります。具体的に誰が該当するかは次の章で詳しく整理します。
自己資本500万円以上を確保する
財産的基礎は、一般建設業であれば自己資本500万円以上か、同額以上の資金調達能力を示すことで満たせます。直前の決算で純資産が500万円に届かない場合でも、金融機関の残高証明書などで資金調達能力を証明する道が残されています。決算日の数字で判断されるため、申請の時期と決算期の関係を早めに整理しておくと動きやすくなります。資金繰りに余裕がない状態で無理に数字をつくるより、取引金融機関と相談しながら準備を進めるほうが、その後の受注拡大にもつながります。
欠格要件に当たらないか確認する
誠実性と欠格要件は、役員や支店長、一定の株主などの人物面を見るものです。不正または不誠実な行為によって免許等の取消処分を受けて一定期間を経過していない場合や、法に定める欠格事由に当たる場合は、ほかの要件を満たしていても許可は受けられません。申請書に虚偽の記載があった場合も対象となるため、過去の経歴は正確に記載する必要があります。非常勤役員まで含めて確認の対象になる点は見落とされやすいところです。
営業所技術者をどう確保するか

営業所技術者になる道は、資格、指定学科卒業+実務経験、実務経験10年の3つに整理できます。社内に有資格者がいれば証明の手間は大きく減り、いなければ実務経験の裏づけ資料を集める作業が中心になります。自社の人員をこの3パターンに当てはめれば、許可申請までにかかる期間がおおよそ見えてきます。
| 満たし方 | 必要になる条件 |
|---|---|
| 国家資格で満たす | 1級建築施工管理技士など、鉄筋工事業に対応する資格をもつ |
| 技能検定で満たす | 鉄筋施工の技能士。2級は合格後の実務経験が必要 |
| 指定学科+実務 | 大学・高専卒は3年以上、高校卒は5年以上の実務経験 |
| 実務経験のみ | 鉄筋工事に関する10年以上の実務経験 |
1級建築施工管理技士が中心になる
鉄筋工事業で扱いやすい資格の1つが、1級建築施工管理技士です。この資格があれば一般建設業の営業所技術者になれるうえ、特定建設業の特定営業所技術者や監理技術者にもなれるため、将来の業容拡大まで見据えられます。社内に該当者がいれば、実務経験を何年分も証明する作業を省けるのが大きな利点です。資格取得を社内で進める場合は、受検資格の見直しが行われている点もあわせて確認しておくと計画を立てやすくなります。
参考:建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧 – 国土交通省
躯体の2級や鉄筋施工技能士も使える
1級でなくても、鉄筋工事業に対応する資格は複数あります。2級建築施工管理技士(躯体)のほか、技能検定の鉄筋施工、登録鉄筋基幹技能者などが一般建設業の営業所技術者として認められています。技能士については、2級の合格者に合格後の実務経験が一定期間求められる取り扱いがあるため、年数の条件を個別に確かめる必要があります。現場の職長クラスがすでに技能士をもっていれば、そこから営業所技術者を立てられる場合も珍しくありません。
参考:建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧 – 国土交通省
指定学科卒は実務3年か5年で足りる
資格がなくても、指定学科の卒業歴があれば実務経験の年数を短縮できます。鉄筋工事業の指定学科は土木工学、建築学、機械工学で、大学や高等専門学校の卒業者は卒業後3年以上、高校の卒業者は卒業後5年以上の実務経験で要件を満たせます。該当する学科を出た社員がいるかどうかは、採用時の履歴書をさかのぼれば確認できます。卒業証明書と実務経験を示す契約書類の両方が必要になるので、早めに取り寄せておくと申請がスムーズに進みます。
資格がなければ実務10年を証明する
資格も指定学科の卒業歴もない場合は、鉄筋工事に関する10年以上の実務経験で要件を満たす形になります。経験年数そのものは足りている会社が多い一方、実際の関門は証明資料をそろえられるかどうかです。許可行政庁によって求められる資料の種類や年数ごとの件数は異なり、契約書、注文書、請求書と入金が確認できる通帳などの提示を求められます。許可をもたない事業者のもとでの経験も対象になるため、独立前の分まで含めて確認する価値があります。資料が散逸している場合は、取引先に写しの提供を依頼する方法も検討できます。
一般と特定のどちらを取るか
鉄筋工事を専門に請け負う下請け企業であれば、まずは一般建設業の許可で足ります。特定建設業が必要になるのは、発注者から直接請け負った工事で下請契約の総額が一定額以上になる場合に限られるためです。自社が元請けの立場で大型工事を分離発注する予定がないなら、要件の重い特定を急いで取る理由はありません。
| 比較の観点 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 必要になる場面 | 下請けとしての受注 小規模な元請け工事 | 元請けで下請契約が5,000万円以上になる工事 |
| 営業所技術者等 | 資格 指定学科+実務 実務10年のいずれか | 1級資格者、または実務+指導監督的実務経験2年 |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上または資金調達能力 | 資本金、自己資本、欠損、流動比率の各基準 |
下請契約5,000万円以上は特定
特定建設業の許可は、発注者から直接請け負った1件の工事で、下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる場合に必要です。裏を返せば、下請けの立場で受注している限り、請負金額がいくら大きくても一般建設業の許可で対応できます。鉄筋工事業の下請け企業であれば、当面は一般で取得し、元請けとしての体制が整った段階で特定を検討する順序が現実的です。
特定は財産要件が大きく重くなる
特定建設業では、財産的基礎の基準が一般より大幅に厳しくなります。欠損の額、流動比率、資本金の額、自己資本の額という複数の指標をすべて満たす必要があり、しかも更新のたびに直前の決算で判定されます。一時的に数字を整えても、その後の決算で基準を割り込めば許可を維持できません。特定を目指すなら、申請時の数字あわせではなく、利益を残して自己資本を厚くする経営の組み立てが前提になります。
【関連記事】建設業の粗利率を改善するには?水準の見方と外注費・単価の打ち手を解説 – 建設の参謀|エスエスコンサルティング
指導監督的実務経験が2年要る
特定建設業の特定営業所技術者を実務経験で立てる場合、通常の実務経験に加えて指導監督的実務経験が2年以上求められます。これは工事現場主任や現場監督のような立場で、設計や施工の全般にわたり技術面を総合的に指導監督した経験を指します。しかも対象となるのは、発注者から直接請け負った4,500万円以上の工事に限られるため、下請け中心の会社には年数を満たしにくい条件です。1級建築施工管理技士を確保するほうが早いという判断になる場面も多くあります。
参考:建設業法施行令(e-Gov法令検索)(第五条の三)
許可取得後の元請企業の新規開拓の進め方

許可は受注の入口を広げますが、それだけで新しい元請企業との取引が始まるわけではありません。許可を取得した会社が増えるほど、選ばれる理由は施工範囲や対応力の伝わり方で決まっていきます。ここでいう新規開拓とは、新しい元請企業を開拓し、協力会社や下請けとして継続的に受注する活動を指します。
| 開拓の段階 | 取り組む内容 |
|---|---|
| 入口をそろえる | 許可業種と施工範囲、対応エリアを書面で示せる状態にする |
| 比較で残る | 価格以外の判断材料を営業資料に落とし込む |
| 接点を保つ | 会社情報と施工事例を継続して更新する |
許可業種と施工範囲を明示する
新規の元請企業がまず確認するのは、どの業種の許可をもち、どこまで自社施工できるかという点です。鉄筋工事業の許可に加えて、加工から組立て、継手のどこまでを自社で担えるか、ガス圧接や機械式継手に対応できるかを明記すると、問い合わせの段階で精度が上がります。対応エリアと同時に動かせる班数まで書いておけば、元請けの工程に乗るかどうかを先方が判断しやすくなります。この情報が整理されていないと、施工力があっても候補に残りにくくなります。
価格以外の判断材料を資料にする
価格以外の判断材料を示せるかどうかで、新規開拓の成否が分かれます。配筋検査での是正の少なさ、急な工程変更への対応実績、安全書類の提出体制など、社内では当たり前になっている内容ほど資料に載せる価値があります。アフターサービスや費用条件を訴求に使う場合は、自社で実際に提供できる範囲にとどめ、追加費用が発生する条件もあらかじめ明確にしておくと、取引開始後のトラブルを避けられます。
会社情報と施工事例を更新し続ける
新規の元請企業は、商談の前後に自社サイトやGoogleマップの情報を確認することが多くあります。会社の所在地や連絡先、保有する許可業種といった基本情報を正確に保ち、施工事例や口コミへの対応を継続して充実させることが、信頼の裏づけになります。特定の施策だけで検索結果の上位に出るわけではないため、情報の正確さと更新の継続を軸に考えるのが現実的です。許可を取得した時点で、会社案内とWeb上の情報を同時に更新しておくと、開拓の初動が早まります。
参考:Google のローカル検索結果のランキングを改善するヒント – Google ビジネス プロフィール ヘルプ
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鉄筋工事会社の取引先開拓を支援する「建設の参謀」
鉄筋工事業の許可を取得したあとに残るのは、どの元請企業へ、どの強みで提案するかという設計です。配筋検査での是正の少なさや継手への対応範囲といった強みも、資料として示せなければ比較の材料になりません。
許可の申請準備に追われる時期と重なると、開拓先の選定や商談の組み立てまで社内だけで進める余裕はなかなか生まれません。
建設の参謀は、建設業および製造業向けの経営参謀サービスです。鉄筋工事会社の支援では、加工・組立て・継手のどこまでを自社で担えるかといった施工範囲を整理し、営業資料とトークスクリプトにまとめるところから始めます。商談前のロールプレイで説明の順序を確かめ、そのうえで戦略に合う元請け候補の紹介にも対応しています。対応範囲は契約内容により異なるため、個別に相談のうえ決定します。
まとめ
鉄筋工事で500万円以上の受注を狙うなら、鉄筋工事業の許可が出発点になり、可否を分けるのは常勤役員の経営経験、営業所ごとの営業所技術者、500万円以上の自己資本を含む要件の証明です。営業所技術者は資格、指定学科卒+実務、実務10年のいずれかで満たせるため、まずは社内の人員をこの3つに当てはめて判断する流れになります。
許可を取得したあと、どの元請企業にどう提案するかを整理したい場合は、以下から相談できます。

